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09流体科学研究所は「流れを科学し、科学的に解明する」ことが専門。今は健康の時代、ということで、このプロジェクトでは、バイタルサインの検知原理の解明に焦点を当ててやっていくことになりました。大きくは、「血流のモデル」と「流れ負荷のシステム」です。血液や脈波形を計測、FBGセンサによる計測とシミュレーションを融合したセンシング技術で、血圧や血糖値を推定していくメカニズムを解明していき、システム構築に貢献していきます。“モデル”にはいろいろありますが、生体外疑似組織(バイオモデル)で、血管の弾性体を再現した血管モデルなどを用いた「疑似血管」での疑似測定、さらに「疑似血液」も作っており、高血糖値の弾性測定なども行います。これらは高透明度による可視化を実現しており、医療画像装置との高いマッチングも証明されています。そして生理学や解剖学とのマッチングテーマです。…例えば、心臓疾患のモデル(平成23年厚生労働省科学研究費)などで得られる血液流量や圧力データで、心電図や血圧などを見ていくと心臓で何が起こっているのか一連でわかるようになる。今後この高感度の計測技術と生体との関連がより見えてくることも期待されています。私ども国際ファイバー工学研究所ではFBGセンサの製造システムを2016年に構築しました。FBGセンサは本体部(長野計器(株))に製造システムで作製されたセンサ部(光ファイバー)を付属させたシンプルなものです。センサ部を身体の脈動点に設置し、脈拍によるひずみの変化を近赤外光の波長変位として検出する高精度なひずみセンサです。ただし、光ファイバーは非常に細くて表面がツルツルしているため、このまま衣服等の編地に導入しても滑って抜けやすい。その問題はカバードヤーンと呼ばれる組紐を編む方法を応用、すなわち光ファイバーを絹糸で巻き付け、インレイ編みすることによりしっかり固定させることで解決しました(特許出願中)。次に、繊維製品に導入したFBGセンサで脈波を測定したところ、その信号から解析方法を変えるだけで複数のバイタルサイン(脈拍数、呼吸数、ストレス、血圧、脈波診断、血糖値ほか)を特定出来ることが実証されました。今回は手首だけの測定ですが、脈をみるところは体にいくつかありますのでそれぞれに合わせた繊維製品への加工が可能と考えています。弊社がFBGセンサに取り組み始めたのは約10年前、古くなったインフラの健全度測定が目的でした。そんな中、石澤先生よりFBGセンサを「人に貼り付けたい」とお話をいただき「」、以来そちらに沿うお手伝いをさせていただいています。弊社が開発研究中のFBGセンサは光センサの中でトップクラスの精度と自負しています。すなわち、編み込んだり動いたり曲がったりしても=光ファイバー内で光強度が変化しても影響がない。測定に用いる弱い近赤外線は弱いだけでなく波長の光が人に無害。電気センサに比べて感電の心配がない。電気ノイズの影響がない。ただ問題は光のスペクトル計測のための分光器・干渉計が高コストで大がかりなこと。ウェアラブルという観点からすると小型化、低コスト化が望まれます。また、服に編み込んだり動いたりして光ファイバーの中の光が損失しても測定できなければならない。更に振動衝撃に強くなければいけない。現在、大きさは親指の第一関節くらい、光損失に対する耐性は遮光フィルターを採用して取り組み中です。精度・コストについても検証を重ねています。FBGセンサ計測とシミュレーション融合で高次元バイタル情報を繊維学部ならではの知見を生かしたFBGセンサで繊維製品導入を可能にFBGセンサの小型化、低コスト、高精度化に取り組む東北大学流体科学研究所准教授太田 信氏信州大学先鋭領域融合研究群国際ファイバー工学研究所 助教 児山 祥平長野計器株式会社FBG事業部藤田 圭一氏

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