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2004年、ハウスホールド製品を扱うメーカー大手のライオン㈱から「香りとデオドラントのソフラン」が発売されました。そのライオン㈱との共同研究で、家庭用柔軟仕上げ剤の香りの検証を担当したのが、信州大学の金井博幸准教授(学術研究院繊維学系)です。「香り」を売りにした柔軟剤は、今や様々な種類があり、テレビCMを目にしない日はありません。特に柔軟剤は、ただ繊維を柔らかくするという機能だけではなく、「香り」によって、顧客の多様なニーズに応える商品開発が進み、最近では、“半径30㎝範囲内で香る”など、様々な形を生み出しながら、メーカー各社がしのぎを削っています。「香りとデオドラントのソフラン」はその先駆的存在だったそうです。考えてみれば、近年、どうしてここまで「香り」が重視される商品が数多く販売されるようになったのでしょうか。もともと、ハウスホールド製品を扱う日本のメーカーは、欧米等の海外メーカーとは違って「人工的な香りはできるだけ無い方が良い」という考えが一般的だったといいます。しかし、海外商品のヒットや、消費者ニーズが多様化する中で、「香り」を新たな付加価値として位置づけ、商品開発を進めるようになったのだそうです。ただ、「モノづくりの国」=日本のメーカーは香りをカプセル化するような技術的な面は得意ですが、香りが人々にもたらすもの、その影響や効果を数値的に測り、検証するというような考え方には至らず、それまで実際にそれを検証する機会はほとんど無かったといいます。五感のひとつ、「香り」が人に対してどのような効果をもたらし、どのように受け入れられるのか―。そこに「感覚計測工学」の手法を活かすフィールドがありました。「私が行ったのは、人が快適な香りとは何かを検証、数値化し、評価・選定すること。例えば、不快臭を嗅いだ時に起こる脳活動や神経系の反応とにおいに対する心理的な印象との関係を分析し、それを評価指標にします。その上で、いろいろな香りを嗅いだ時の脳や神経系の反応を計測すれば、香りによる不快度、ときには快適度までも推定することができ、あいまいだとされるにおいの心理的な印象を客観的データで裏付けることができます」。金井准教授は当時のハウスホールド製品メーカーと07香りが継続する衣服、見る角度により色が変化するファスナー、はたまた、ご飯が美味しい漆器茶碗、握り心地の良いステアリングホイール…人間の五感を科学すると、世の中の製品の広がりは無限大とも言えます。しかし、そこに絶対的に必要なのが、数値化、データ化での可視化検証。今回は“心地”や“気分”といった、なんとも不確かな人の感覚といったものを徹底的に科学している感覚計測工学の現場に行ってまいりました。(文・柳澤 愛由)柔軟仕上げ剤に芳香効果を…「香り」の進化はいつから?感覚計測工学の醍醐味がここに! 感覚計測と評価技術が製品の付加価値を高める! 人の五感を科学する「五感を可視化」する感覚計測・評価技術のスゴ信州大学繊維学部先進繊維・感性工学科先進繊維工学コース准教授(学術研究院(繊維学系))金井 博幸1999年信州大学繊維学部感性工学科卒業、2000年中国蘇州大学留学修了、2001年信州大学工学系研究科修士課程修了、2003年信州大学総合工学系研究科博士課程中退、同年信州大学繊維学部繊維システム工学科助手、2007年同助教、2009年同講師を経て2011年より現職かないひろゆき

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