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05 また、「モノ」を作るということですので中心は企業さんになります。海外企業に勝つためには何かキラリとしたものがあって、ライバルよりいいものを作らなければならない。地元メーカーが持っている基盤技術に信州大学の先鋭的な研究を注ぎ込んで、まずJAXA等に納められる見本を作っていきたい。夢は大きく、補助燃料タンク以外にも2つ3つプランを考えています(笑)。今後数年間でまず「モノ」を作り、その中で学生さんも教育していくことを考えています。 また、今年から文部科学省の採択(※1)を受けて、この共同研究講座で、実機飛行教育なども行うこととなりました。名古屋大学他、12大学と日本航空宇宙工業会(SJAC)が共同参画する教育プログラムで、実機飛行による実践教育とそれにつながる啓発教育を、全国の大学生を対象に実施します。まさに全国区の展開ですね。─今度は宇宙も関連したお話を。榊宇宙システム部門長から諏訪地域のロケットプロジェクトの連携も交えてご紹介ください。榊 「SUWA小型ロケットプロジェクト」の背景について。「信州・諏訪圏精密工業の活性化人材の養成」の中に大学院の信州・諏訪圏社会人コースという専門職コースが発足したのは平成22年なのですが、その修了生と大学院の在籍者(社会人学生)で始めたのが「信州・諏訪圏テクノ研究会」です。実に“熱い”モノづくりの有志達で、彼らがSUWA小型ロケットプロジェクトの中心メンバーになっています。ちなみにですが、信州大学航空宇宙システム研究センターのロゴもSUWA小型ロケットプロジェクトのメンバーが無償で作成してくれました(笑)。 工学部中山准教授らが、超小型人工衛星(Shindaisat「ぎんれい」)の構造設計に参画しそれが一区切りした頃、次のターゲットに「衛星を載せることができるロケットを!」と話が盛り上がりました。小型ロケットは、精密加工を得意とする諏訪地域の技を詰め込むことができる地域にマッチしたテーマでもあります。時期を同じくして、内閣府の地方創生先行型の交付対象事業にも採択されました。「SUWA小型ロケットプロジェクト」ではこれまでに培ってきた炭素繊維強化プラスチックの加工・金属接合技術やハイブリッドエンジンの開発などを行い、できれば100km(宇宙空間までの距離)飛ばしたいと思っています。佐藤 社会人大学院修了生には、「あなた方は地域の先導者であれ」と伝えています。ですが地方の会社はそれぞれがすぐ独立できるほど甘くない。「信州・諏訪圏テクノ研究会」の大学院修了生たちは、所属企業の垣根を越えたネットワークを作り、休日や時間外に活動してきたのです。立派です。榊 情熱と努力なしには出来ないことですね。同プロジェクトのコンセプトは「ロケット=安全・低コスト・再利用」です。宇宙にモノを送るために、ロケットのコストダウンと再利用は必須です。安全についても、ロケット類は火薬の塊をイメージして危険なものと捉えられがちなのですが、同プロジェクトにおいて製作するロケットのエンジンはハイブリッドエンジンです。点火時以外は火薬を使いません。佐藤 地元企業にもメリットがあります。同プロジェクトの取り組みは元々地方創生「SUWAブランド創造事業」の目玉の一つであり(プロジェクトマネージャー:工学部中山昇准教授)、地域活性化ということで始まっています。小型ロケットの多くは民間企業がビジネスに使うためのもの。測定用、気象衛星だとか農地の遠隔モニタリングとか船舶航路監視用が目的です。あわせて小型ロケットは基本的に単品・試作商売的なところもあるので、中小企業向き、県内企業にはビジネスチャンスです。榊 宇宙システム部門への参画に快く引き受けてくださったJAXAの嶋田先生がハイブリッドロケット研究の大家ですのでいろいろとご指導いただけるのも強みです。固体燃料の形状検討とか、まだまだやることは多いのですが、ハイブリッドロケットは有望かつ可能だと思っています。 ちょうど先週、地方都市で開かれる工業見本市では国内最大級とされる「諏訪圏工業メッセ2016」が開催されました。中でも航空宇宙産業の展示ゾーンは例年より拡大されて同プロジェクトも出展しました。特別展示「下町ロケット」コーナーの隣で注目を集めていました。半田 航空関係のパーツを作っている企業も県内に40社くらいはありますからね。榊 ええ。事実、メッセへの出展が受注の大きなきっかけになっています。先ほどMRJの話が出ましたがMRJにも県内中小企業のパーツが採用されていますから。その一端を担うのが我々、と自負できるくらいに活動を高めたいですね。社会人大学院コースは継続していますから地元もセンターに期待を寄せていると思います。─本日は、来年4月から本格的に始まる航空機システムプログラムで学ぶ信大生、大石さん、ケルビンさんに来てもらっています。半田 2人とも飯田での講座の話が上がったとき、すぐに自分から「行きたい」と手を挙げてくれたんですよ。大石 実は、航空機や宇宙に興味があり、どこかで関われるかもと思って電気電子工学科に入ったんです。私が大学院に進学する時、ちょうどこの講座が出来るなんて(!)グッドタイミングと思ったんです。講座が開かれる飯田市の辺りは夜空が美しいところだと聞いていますので、星空も楽しみです(笑)。ケルビン 僕はマレーシア出身なんですが、小さいときからラジカセや車のパーツや中古パソコンをもらってきては分解して仕組みが知りたかった。ほとんど壊すだけでしたが(笑)。機械工学方面に進むぞと決めたとき日本(長野県)に親戚がいるので、留学も視野に入れて高専(高等専門学校)や大学を探して2011年に来日、長野高専を経て信州大学に入りました。大石 私も父親が暇さえあれば機械いじりや車修理をしていたので、それを見て自分も小さいころから何かを分解して遊んでました。さきほども言いましたが空を見るのも好きなので、星や飛行機を見たりそのことについて考えたりするのはとにかく飽きませロケットのコンセプトは「安全・低コスト・再利用」100km飛ぶことを目指して、センターはさらに高度化したい(榊)航空機「補助燃料タンクシステム」のイメージ図。飛行距離を伸ばすためにオプションとして装備する。※1「実機飛行を通した航空実践教育の展開」(宇宙航空科学技術推進委託費)

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