環境報告書2016|信州大学
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特集信州大学国際科学イノベーションセンター信州発イノベーション創出のプラットフォーム―アクア・イノベーション拠点の中核施設 100kWのリン酸型燃料電池で、都市ガスにより、夜間も含めて連続運転による発電が可能です。その高温・低温の排熱は、吸収式冷凍機によって1階・2階・4階スパコン室の外気処理空調(空調)、さらに湿度を制御するデシカント空調に利用しています。デシカント空調は、吸着材であるセラミックローターが回転しながら除湿と吸着した水の脱離、再生を連続的に行う仕組みで、空調とセットで各階に設置されていますが、燃料電池からの排熱はとくに6、7階のプロジェクト実験室用に使われています。 冬季は屋外エントランスほか、三つある出入り口付近の道路の融雪にも、燃料電池の排熱が使われています。 地下水は毎月1万トン超がくみ上げられ、まず、冬は暖房、夏は冷房用の熱源に使われています。井戸からくみ上げられた地下水は熱源水槽に貯蔵され、そこから熱交換機にくみ上げられ、各階に設置された熱源ユニット(室外機)に熱だけが送られます。空調はほぼ365日、昼夜を問わずに使われるため、熱源として一次エネルギーの削減に寄与する度合いは大きく、燃料電池による削減効果に匹敵すると想定されています。熱源として使用した後の地下水は、大半は井戸に戻されますが、一部は中和などの水質調整のあと、トイレの雑用水として使われ、上水道の削減に貢献しています。 7階のプロジェクト実験室には、ドライルーム4部屋(準備室を含めて約144平方メートル)があり、環境・エネルギー材料系の研究開発に使われています。ドライルームは、湿気が極端に少ない作業スペースのことで、リチウムイオン電池やキャパシターの製造工程では必須とされています。ただ、湿度を極端に減らすために除湿、空調にかかるエネルギー消費が大きく、省エネは難しいとされていました。 AICSのドライルームは、予約管理システムを作り、さらに運動モードをこまかくシステム化することで、省エネ化を試みています。予約システムを導入することで、必要のない時間に稼働させる必要がなくなり、太陽光発電に匹敵するほどの一次エネルギーを削減することができると想定されています。 ドラフトチャンバーは、実験などで発生する有毒ガスを強制的に処理・排気するカプセルで、7階のプロジェクト実験室に10台設置されています。常時、毎秒0.5メートルで強制排気しているところを、人検知センサーを導入し、運転を平日は50%、夜間・休日は25%に減らすことができるとし、太陽光発電の半分ほどの一次エネルギーを削減できると想定しています。100kWのリン酸型燃料電池と排熱利用のための吸収式冷凍機外からの熱負荷を軽減するダブルスキン。高断熱耐火金属外壁、高断熱ガラスとともに、空調の負荷を減らす効果がある。屋上にある自然換気の窓口(左)と、地下水熱や排熱を利用し調湿可能なデシカント外気調和機(右)。自然換気は、天候、温度、湿度の設定により自動的に開閉し、空調スイッチを手動で切り、窓を開ける仕組み。その他の設備燃料電池 発電以外に排熱を空調、除湿、融雪に利用井水利用ヒートポンプ 豊富な地下水を熱源、雑用水に利用ドライルームの省エネ化 予約管理、運転モードの制御でドラフトチャンバー変風量制御 人検知センサーで省エネ運転8

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