環境報告書2016|信州大学
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地域資源を活用した環境保全の取り組み―教育学部ブナの実活用プロジェクト― 見慣れた裏山が実は貴重なもので、経済活動にもつながることを知る。地域の人がブナの森に目を向け、ブナの森を守る活動が広がる。そんな未来を描いたプロジェクトが、教育学部を中心に進められています。○プロジェクトの発足とコンセプト ブナの実活用プロジェクトは、26年度信州大学COC事業で実施した、地域志向の強い研究を支援する事業をきっかけに発足しました。背景にあるのは、ブナの森を守りたいという地域の方々の思い、そして自分が暮らす地域の良さや可能性を知ることが地域の環境保全につながるというプロジェクトの考え方です。ブナの実羊羹は、その手段の一つとして誕生しました。 プロジェクトのコンセプトは、パッケージに表現されています。ブナの実羊羹のパッケージには、地域の魅力を伝える工夫が埋め込まれ、小型の機材を用いて小規模6次産業でも応用できるようデザインされています。本プロジェクトの対象地である飯山市のみならず、持続可能な地域を作ろうとするすべての人に応用してほしいという希望がこめられています。○ブナの実羊羹の商品化を通じた地域との協働 ブナの実羊羹の商品化が実現したポイントは、産学官民の連携、学際性と少しの資金でしょう。 コンセプトを支えているのは「長野県シニア大学卒業生おせっかいグループ」。ブナの実の採取は「NPOここから 自立訓練事業所わっこ」、羊羹の製造は「いいやま食文化の会」、販売は「信州いいやま観光局」と協働して取り組みました。大学ではCOC事業を進める地域戦略センターや知的財産室、自治体では長野県や飯山市がプロジェクトをバックアップしました。小さな羊羹ですが、消費者の手に届くまでに実に多くの“地域人”が関わっているのです。 プロジェクトには、4名の異領域の研究者が集まり、各専門分野の学生と一緒に研究に取り組みました。また、大学が地域貢献に力を入れようとする機運が、少しの資金獲得につながりました。地域の人々のエンパワメントにつなげるためには、この「少しの」が重要です。○ブナの実活用プロジェクトのこれから ブナの実羊羹は2016年3月に発売され、主に飯山市内と都内アンテナショップで店頭販売されたほか、全国植樹祭や大学は美味しいフェアなどのイベントでも販売されました。少々高価ですが、プロジェクトの趣旨が付加価値となって売れ行きは好調。発売から約4ヶ月で完売となりました。次にブナが結実する数年後まで、ブナの実羊羹はまさに幻となりますが、プロジェクトでは羊羹にとどまらず、ブナの森の魅力を伝える取り組みを続けていく計画です。地域社会への貢献についての取り組み0451

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