環境報告書2016|信州大学
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持続可能な社会を実現する活動拠点を訪ねてスウェーデン・フィンランド担当教員:学術研究院(人文科学系)教授株丹 洋一[人文学部人文学科 比較言語文化]   日 程:2015年8月31日~9月4日 訪問先:RCEウプサラ(スウェーデン)     RCEエスポー(フィンランド) 参加者:人文学部 1年 渡邊里穂     大学院人文科学研究科 1年 森江かおり     大学院人文科学研究科 1年 新山正隆     人文学部教授 株丹洋一 人文学部の環境教育海外研修は3回目を迎えた。今回は北欧でESD*(持続可能な開発のための教育)の活動拠点であるRCE*の調査を行った。株丹教授は、地域が一体となって活動を推進しているという大きな動きを見せるRCEに初めて出会うことができたという。* ESD:Education for Sustainable Development* RCE:Regional Centers of Expertise on Education for Sustainable Development     各拠点は、国連大学が認証する。◎RCEウプサラ スウェーデンは環境先進国の一つ。ESDの取り組みも早く、2006年には大学でSD(持続可能な開発)を教えることを義務付けている。株丹教授がギリシアのRCEを訪れた際に対応したRCEクレタのスタッフ夫妻がともにスウェーデンでESDを学んでいたことも、今回の訪問のきっかけになった。 ウプサラ大学は、1477年に創立された北欧最古の大学で、大学関係者に15名ものノーベル賞受賞者がいるという名門大学。大学でのESDは進んでいたが、学生たちの提案によってRCEが設立されたのは比較的新しく、2013年に認証を受けている。これまでに目立った実績はないが、教授は対応してくれたメンバーにRCE活動に対する高い意識と強い意欲を感じたという。大学でESDが浸透していることもあるが、背景には、深く根付いた民主主義があり、学生が授業づくりに参加するという先進的な学生中心の学びがある。 CEMUS(セムス:Center for Environment and Development Studies)という学部の授業では、学生自身が企画から講師のコーディネイトをする。対応してくれたスタッフ日本人留学生の浅野由子さん・石原祥子さんと、RCE創設時からのスタッフ、サラ・アンデルセンさんの3人とも、授業のコーディネーターを務めているという。このような自発的な学びがESDの学び方、RCEの活動に直結していくのだ。◎RCEエスポー エスポー市は、ヘルシンキの西隣りに位置するフィンランド第二の都市。RCEエスポーは、2011年に認証を受けたフィンランド唯一のRCEだ。渉外担当のアンナマリア・ヌーティネンさんが研修メンバーを自宅に招いて活動内容を紹介してくれた。 「訪問前は、ほとんど情報を入手することができず、話を聞いて、またヌーティネンさんたちがまとめた報告書を見て、驚きました。地域全体が一体となって取り組んでいるRCEであり、具体的な成果もあげていたのです。全く予想していませんでした。」教授は、エスポーのようなRCEは、これまで見たことがないという。 ヌーティネンさんたちの報告書*1(「Orchestrating Regional Innovation Ecosystems ・Espoo Innovation Garden:地域イノベーションエコシステムの交響 ―エスポー・イノベーション・ガーデン―」*2に掲載)によれば、RCEの活動は、エスポー市の教育局が持続可能な開発と住民の福祉にかかる課題を探すことから始めている。市のデータや各部署、市民への面接調査によって課題が抽出されると、エスポー市のRCEに関わりうる関係者が結集し、4つの目的とビジョンを作成した。 要約すると「①保育計画や幼児から高等教育のカリキュラムまでESDを取り入れること ②指導者を始め、すべての市民への教育と訓練を行うこと ③住民福祉、持続可能な開発とライフスタイルの理解を促進し、サービスや製品の提供を推進する ④自然を活かした、スマートな(先端技術を用いた環境配慮型の)都市計画を理解し、環境負荷の小さいサービスと製品を開発する。文化的価値も大切にする」とある。 「エスポー市は住民の福祉を一番に考えていると思います。ストックホルム、ガムラスタン ウプサラ大学、旧校舎RCEウプサラにて環境への取り組み022-1 環境教育人文学部 環境教育海外研修38

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