工学部研究紹介2017|信州大学
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ミクロな世界の流れを『コンピュータシミュレーション』によって解明!吉野研究室液液二相のスラグ流解析(左上図)、狭窄部を通過する赤血球の変形の様子(左下図)、脳動脈瘤モデルによる血流解析(右図)研究から広がる未来機械システム⼯学科卒業後の未来像吉野研究室では、シミュレーションに用いるソフトウエアを学生が自作で構築しています。一方企業では、時間的な制約から市販の汎用コード(既製品)を使うのが一般的ですが、特にマイクロフルイディクスなどの分野においては、実現象を正確に模擬していないといった問題点がよく聞かれます。そのため将来的には、得られた研究成果を集大成し、企業の方々にも満足のいく汎用ソフトウエアを開発・製作することを目標としています。自動車関連産業への就職が多く、家電メーカや重工、精密機器を扱う企業などにも卒業生を輩出。自分の専門分野にとどまらず、新しい領域の課題解決に意欲的な研究者・技術者として様々な分野で活躍しています。吉野正人教授京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了。2000年信州大学工学部助手に着任。2012年より現職。格子ボルツマン法を中心とした計算熱流体力学、移動現象論の教育・研究に従事。吉野研究室では、流体や熱・物質の流れをコンピュータシミュレーションによって解明する研究に取り組んでいます。近年、計算機のめざましい発達のおかげで、これまで調べることが難しかったミクロな世界の流れを精度よく解析することができるようになってきました。特に、『格子ボルツマン法』というパワフルな計算手法を用いて、微小液滴が衝突する際の挙動や小さな空隙をもつ物体内の熱流動現象など、主に『マイクロフルイディクス』(微小スケールの流体力学)の研究を行っています。さらに、脳神経外科医と共同して血流などの生体流れの研究も行っています。研究シーズ共同研究・外部資⾦獲得実績社会貢献実績研究キーワード【先生の学問へのきっかけ】幼少の頃から算数・数学は好きでした。高校生になって化学に興味を持ち、大学では化学工学科に入学しました。化学工学は流体、反応、材料、制御など多岐にわたる学問であり、その中で今の研究分野に出会いました。進学する大学の学科を選ぶ際、それで一生が決まるわけではありません。何となく面白いとか興味があるからという理由でもいいと思います。実際に入学すると、学科の名前からはわからない楽しい分野が数多くあることに気づくでしょう。また、学生時代の指導教員は、学問の厳しさはもちろん面白さも教えてくれました。様々な出会いを大切にして、純粋に面白いと興味を持つことが重要だと感じています。•複雑な混相流問題に適用可能な格子ボルツマン法の開発•マイクロポーラス内における移動現象解析•濡れ性を考慮した固体壁面上における液滴の挙動解析•雲粒子の成長過程におけるダイナミックシミュレーション•マイクロリアクタ内における混合・拡散現象の解析•分離・分級を目的とした分岐管内における固液二相流解析•脳血管分岐部付近に発生する動脈瘤まわりの血流解析•コンクリート溶脱解析の高度化(民間企業との共同研究)•鉱物繊維生成に関する研究(民間企業との共同研究)•水素ステーションの低コスト化を実現するプレート式熱交換器の低圧拡散接合技術の開発(経済産業省戦略的基盤技術高度化支援事業)•格子ボルツマン法を用いたマイクロ流路内における粘弾性固体の挙動解析(科研費若手研究(B))•格子ボルツマン法による複雑構造の微小流路内に多数の粘弾性体を含む混相流解析(科研費基盤研究(C))•乱流混合と内部自由度のあるマイクロ粒子巨大集団との相互作用(学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点公募型共同研究(JHPCN))など日本機械学会:流体工学部門学術表彰WG幹事および同委員、理事(北陸・信越地区担当)、流体工学部門A-TS05-19幹事日本流体力学会:代議員、中部支部代議員および運営委員(幹事)日本混相流学会:評議員、役員(年会講演会・混相流シンポジウム実行委員長)、理事(北陸・信越地区担当)、研究企画委員会研究分科会主査日本計算数理工学会:理事、論文集編集委員会幹事※Sai+スペシャルNo.365より引用数値流体⼒学・移動現象論・格⼦ボルツマン法・複雑混相流・マイクロフルイディクス・⽣体内の流れSBC信越放送「YES!ものづくりすごいぞ!信大工学部」で放映された研究室紹介:シミュレーション結果を見ながら研究室で議論している様子(左下図)、卒業研究に取り組んでいる風景(右下図)(URL:http://saiplus.jp/special/2016/03/365.php)エンジン内の燃料噴霧などで見られるマイクロスケールオーダの微小液滴を正面衝突させた時の挙動:小液滴がめり込むように衝突し、その後引き伸ばされる様子が再現されている食品工業で見られる水あめなどの高粘性液体を平板上に落下させた時のシミュレーション結果:ある条件下では、液体はコイルを巻くようなbuckling(座屈)現象を示す95

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