工学部研究紹介2017|信州大学
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千田研究室ホウレンソウのような軟弱な野菜を対象とした収穫自動機械の開発。実現できれば、「農業機械の革命」とさえ言われている除振台性能を向上させる制御技術の開発。研究成果は、(財)油空圧機器技術振興財団などから優秀論文として顕彰された博士課程小池雅和君による国際会議での研究発表(Santa Clara University, USA)機械システム工学科研究から広がる未来卒業後の未来像千田研究室では、メカや自動車等の移動体、ロボットや人体など、運動する物体の『動き』の解析とモデリング、運動状態の推定と予測、およびその自動制御に関する研究を行っています。そこでは、数学を基礎とした『制御工学』を活用し、新たな付加価値をもたらす技術の創造を目指しています。それらの研究成果は、ハードディスクドライブのヘッドの高精度位置決め、除振台の高精度な振動抑制、人体転倒動作のリアルタイム検知、農業用ロボットの開発など、様々な対象に応用することができ、多くの企業との共同研究を展開しています。『制御工学』は、『動き』のある対象に適用できる汎用の科学技術です。例えば、メカは物理的に動きますが、その意味では人体も同様です。より広く見ると、株価も時間と共に変化するため、動きのある対象と見ることができます。『制御工学』的な考え方は、メカに限らず、このような広い意味での『動き』のある対象(これを『システム』と言います)の動作予測や自動制御を実現するために非常に有用です。このような工学分野は『システム科学』とよばれます。システム科学は、今日のような複雑化した社会における基盤技術として、重要性が高まっています。研究室では、愛情の有る厳しさをモットーに研究指導しています。『大学は、社会人として自立する通過点に過ぎない。社会に出てから困らない程度の自力をつけて卒業できれば、将来の大きな飛躍に繋がる。』というのが、先生の口癖です。千田有一教授(株)東芝研究開発センターを経て、2002年4月より信州大学工学部。制御工学、システムモデリング、信号処理、ロボット工学、システム設計工学と、その産業、農業、福祉医療、などへの応用に関心がある。システムの動きを予測し、意のままに操る。『制御工学』の極意を探求ホウレンソウ自動収穫機械(試作3号機)空圧式除振台実験装置研究シーズ共同研究・外部資金獲得実績社会貢献実績研究キーワード動的システムのモデリング・自動制御・振動制御・モデルベースセンシング・状態推定・フィルタリング【先生の学問へのきっかけ】自分でも良く分かりませんが、やってみたいという興味は有りました。制御を使ってロボットを思いのまま動かすなんてカッコ良いと。やってみたらそこそこ面白いと思い、その興味がいつまでも続いている。そんな状況が長く続いて、気づいたらこうなっていたという印象です。でも、一度は諦めて、大学院を修了後、一般企業に長く勤めました。そのままエンジニアでいることもできたので、まさか大学に戻ることになるとは思っていませんでした。でも、こうなったのは、自分の意志だけではなく、色々な巡り合わせもあるのだと感じています。•システム同定理論を活用した動的システムのモデリング•モデルを活用したセンサレス状態推定•カルマンフィルタを活用した状態推定•適応制御、モデル予測制御、非線形制御等による動的システムの高精度制御(振動制御、位置決め制御、最適制御、etc)•計測制御工学のシステム設計への応用•計測制御工学の農業機械への応用•人の転倒検知アルゴリズムの構築(民間企業との共同研究)•野球ボールの回転速度推定(民間企業との共同研究)•オン/オフ弁を用いた空圧式防振台の振動制御(民間企業との共同研究)•精密位置決め機構のモデリング(民間企業との共同研究)•ホウレンソウ自動収穫装置の開発(農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業)•レタス自動収穫装置の開発(農林水産省・地域戦略プロジェクト)•土と剛体の相互作用を考慮した制御技術の構築と農業分野への応用展開(科研費(基盤研究A))文部科学省科学技術政策研究所(NISTEP)客員研究官公益社団法人計測自動制御学会常務理事、評議員、フェロー、計測制御エンジニアバイオメカニズム学会理事、評議員日本機械学会編修委員、代表会員、MoViC2010実行委員長、JSDDAsociateEditor新聞掲載状況:・日刊工業新聞(2015年11月27日):ホウレンソウ収穫装置・日刊工業新聞(2015年11月4日):農業ロボット・日本農業新聞(2015年11月3日):ホウレンソウ収穫装置・日本経済新聞(2015年3月11日):野菜収穫ロボット・朝日新聞(2015年4月19日):ホウレンソウ収穫装置・中日新聞(2015年4月8日):ホウレンソウ収穫装置特許取得状況:・空圧式防振台システムの振動抑制制御方法(特許第5762069号)・球体の回転検出装置及び方法(特許第5681936号)センサ埋め込みボール周波数分析による回転速度推定CWTによる推定値ジャイロセンサ計測値球体内に埋め込んだ加速度センサによって揚力に起因する脈動を計測し,FFTやウェーブレット変換等の信号処理によって球体の回転速度を正確に計測できるシステムを開発しました.この方法によれば、ジャイロセンサで計測できない高速回転であっても推定可能です.(JSME論文集(C編) 2012,SICE Annual Conference 2011)90

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