工学部研究紹介2017|信州大学
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伊東研究室研究から広がる未来卒業後の未来像伊東研究室では、特定の有機溶剤などに可溶な有機半導体やナノシートと呼ばれる分子サイズの薄さの酸化膜を組合わせた新しい太陽電池や発光デバイス、センサなどの開発と動作のしくみを調べる研究をしています。これらの超薄膜材料はこれまでSiに代表される無機半導体のように特殊な真空装置で作ることも可能ですが、塗布法(=ウェットプロセス)を用いて桁違いの安さと簡便さでありながら工夫次第で驚異的な性能を発現する可能性を秘めています。そのための新しい概念やしくみの理解を通した次世代エレクトロニクスの可能性を探求しています。有機半導体やナノシートを用いたデバイスは室温から100℃程度の低温で製造可能です。500℃~1000℃を超えるプロセスを必要とするシリコンや無機化合物の半導体に比べて極めて小さな製造エネルギーで性能面で引けをとらない太陽電池や発光デバイスが実現可能となります。プラスチックフィルムや紙の上に作ることも可能で超軽量・フレキシブルで貼ったり着用可能なエレクトロニクスの世界の実現に貢献します。電子材料・デバイス(部品)は目立たないけど、日本・世界の電気電子産業の要です。自分で作った物がしっかりと動く。工夫とアイデアで何倍にも性能が向上する。電気電子工学分野の幅は極めて広く多様な業界への進路が考えられますが、そこまでの過程や達成感を通して、自力を付けた人であれば社会人として大きな飛躍が期待できます。伊東栄次教授東京工業大学、信州大学助手、信州大学准教授を経て2015年より現職。研究分野は酸化膜や有機ナノ機能材料とそのデバイス・システム応用。特に、塗って作れる太陽電池、有機EL、センサ等の省エネデバイスの開発と応用に関心がある。ナノ材料を駆使して⼿軽な技術で最先端の発光・光発電・センサなどを実現する!電⼦情報システム⼯学科研究シーズ共同研究・外部資⾦獲得実績社会貢献実績研究キーワード太陽電池・有機EL(発光ダイオード)・誘電体薄膜・ナノカーボン複合体・センシングシステム【先生の学問へのきっかけ】シリコンを基盤としたエレクトロニクスの限界が叫ばれ始めた1990年代、もっと身近でシリコンでは実現し得ない機能を持つ材料を使って何か作れないだろうか?ちょうどそんな時期に、分子一つだけでダイオードのような機能を発現するけど、その原理が未解明の未来のナノ材料と注目され始めたのが有機半導体でした。それからの20年でナノ材料群の可能性は大きく広がり次世代の発光デバイスや太陽電池、さらには生体を模写したセンサの「肝」と呼ばれるほどに発展しました。そうは言っても、まだ新しい分野でアイデア次第で様々な可能性が潜んでいる新しい分野です。有機半導体デバイスは無機材料のものと比べて驚くほど簡単に作れて思いがけない優れた性能を発現可能。そんなことにはまって今に至っています。•薄膜太陽電池(特に低温・塗布プロセスを用いた太陽電池)•有機発光ダイオード(OLED)•有機半導体を用いた各種エレクトロニクス材料・デバイス開発•有機絶縁材料の薄膜電気物性•極薄酸化物誘電体を用いた大容量キャパシタ、新奇電子機能応用•ナノカーボン及び金属ナノ粒子の複合体とその次世代電極材料開発•高性能センサ(湿度・水蒸気、有機系ガスなど)とその計測システムの開発•「高分子/カーボンナノチューブ複合体の電子応用」(文部科学省「長野・上田地域知的クラスター創成事業」の一環として)•「カーボンナノチューブ・有機半導体複合体薄膜電子デバイス」(科学技術振興機構(JST)データ補完事業)•「高分子/カーボンナノチューブ複合体を用いた超高性能電界電子放出源の開発」(科学技術振興機構(JST)シーズ発掘試験)•「プリンテッドエレクトロニクスに向けたナノ機能材料の高分解能パターン印刷積層化技術の開発とデバイスの試作」(科学技術振興機構(JST)A-STEP探索タイプ)•「カーボンナノチューブ/ナノメタル複合体配線の実用化にむけた要素技術開発」(科学技術振興機構(JST)A-STEP探索タイプ)•「低温形成N型酸化チタン層を用いたフレキシブル有機太陽電池」中部電力基礎技術研究所研究助成•「湿度センサの開発」企業との共同研究•「インバータ回路部品の評価高度化に関する基礎研究」企業との共同研究•「フレキシブルな量子形状構造を持つ有機単電子トンネル素子特性」(科研費萌芽研究)•「高起電力有機薄膜太陽電池のための新奇ナノ材料開発と構造制御」(科研費基盤B)•「ナノカーボン電極を有する超高速ハイブリッド薄膜ガスセンシングデバイスの開発」(科研費挑戦的萌芽)応用物理学会機関紙編集委員応用物理学会有機分子・バイオエレクトロニクス分科会庶務幹事、代議員応用物理学会北陸信越支部庶務幹事、代議員電気学会調査専門委員会電子情報通信学会有機エレクトロニクス研究専門委員会など38

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