工学部研究紹介2017|信州大学
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浦上研究室研究から広がる未来卒業後の未来像現代の情報化社会を支える集積回路(IC)技術は、パソコンやスマートフォンを筆頭に様々なところに用いられています。ところが、データ量の増加により毎年のように計算・処理能力の向上や高速化が要求されています。現在では、ICを構成する素子(LSI)の小型化などにより素子数を増加して高性能化しています。しかし原子レベルに到達している小型化に対して、根本的な改善策が必要です。より高速化が期待できる材料や光通信の導入により高速化することが提案されています。表題の層状物質がそれらの材料として有望です。層状化合物はグラフェンの流行から注目されている材料の1つです。しかし現状では結晶の高品質化が重要課題の1つとして挙げられ、解決が難しいです。また、まだまだ実現されていな新材料もあり、様々な可能性が眠っています。本研究室では、結晶の高品質化と新材料の提案を世界に発信し続けます。層状材料は極薄膜(1nm程度)でも機能する材料であるため、低コスト化が期待されます。本研究室では、半導体素子や材料などを総合的に知る必要があります。また精密素子を作るための機器を自らが動作させ維持管理を行います。そのため、電機メーカーを筆頭に、材料、装置メーカーなど幅広く活躍することが期待されます。浦上法之助教博士(工学)豊橋技術科学大学2015年より現職。研究分野半導体工学、結晶成長、光電子工学、層状物質新しい半導体材料の探索と素⼦応⽤層状物質に関する研究電⼦情報システム⼯学科研究シーズ共同研究・外部資⾦獲得実績社会貢献実績研究キーワード層状物質・炭素化合物・遷移⾦属ダイカルコゲナイド・13族カルコゲナイド【先生の学問へのきっかけ】中学生の頃に電化製品に興味を持ち、軽い気持ちで電機メーカーに就職して作ってみたいと思うようになりました。近道であろうと考え工業高等専門学校に進みましたが、19歳の頃に実験で光る半導体に出会いその後は夢中になりました。原理や理屈が難しいのですがそれが興味に変わり更に深く知ってみたいと考え大学へ編入し、運よく半導体材料や素子の研究をしている研究室に配属されました。その後勉強内容は難しく大変な経験も多かったですが、興味は薄れず疑問は尽きず将来はこの分野で飯を食っていきたいと思いました。本研究室では、主に新しい層状物質の研究を進めている。この研究では、高移動度を示す電子材料と発受光素子用の光材料を形成する技術、層状物質に重要な厚さを制御する技術を構築している。これらの技術を用いて以下のような基礎研究や新しい光・電子素子を研究する。•新しいグラファイト系化合物材料の形成および基礎物性探索•新しい遷移金属ダイカルコゲナイドの作製と大面積形成および光電子素子応用•13族カルコゲナイドの作製および光電子素子応用•その他の層状材料による、超伝導材料、絶縁体、トポロジカル絶縁体の研究•vanderWaals異種接合構造による新規素子の開発主な研究設備等(学内共同利用設備を含む)炭素化合物形成用化学気相堆積(CVD)装置、13族カルコゲナイド用分子線エピタキシー(MBE)装置、蒸着装置(EB、スパッタリング)、高温管状炉、Raman分光装置、紫外可視赤外分光光度計、X線回折装置、X線光電子分光装置、原子間力顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡C面サファイア基板上のモリブデン蒸着膜の硫化により形成した二硫化モリブデン(MoS2).X線回折によりC軸配向した単結晶であることが示唆され,吸光度測定から層間相互作用が減少したことによるバンドギャップエネルギーの広がりが見られている.高温管状炉分子線エピタキシー装置。結晶作製用装置であり、内部は10-7Pa程度の超高真空に保たれている層状物質である二硫化モリブデン(MoS2)薄片。半導体の性質を示し、次世代光電子材料として期待されている研究者情報(UrakamiNoriyuki)https://www.researchgate.net/profile/Noriyuki_Urakami36
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