工学部研究紹介2017|信州大学
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卒業後の未来像研究から広がる未来鈴⽊研究室数学によって物理現象を読み解く数理物理学の世界鈴木章斗准教授北海道大学で学位を取得後、学振研究員、Paris-Sud滞在、MI研究所PD、信州大学助教などを経て、2014年より現職。専門は、数理物理。最近は、量子ウォークについての研究をしている。学生によるゼミ風景、議論をしながら研究を深めていく写真サイズ高さ9.8cm×幅7.5cm配置位置横11.4cm、縦2.85cm⼯学基礎教育部⾨近年の科学技術の進歩により、これまで実現不可能と思われてきた理想的な量子系が現実に作られ、精密な観測も可能になってきました。このような量子系の具体例としては、人工原子やナノ材料など、さまざまな応用が期待されるものが含まれています。理想的な量子系といっても、その性質を厳密に解析することは容易ではなく、高度な数学が要求されることがしばしばあります。このように物理現象を厳密な数学を用いて解析しようという試みは、数理物理学と呼ばれる分野の研究テーマのひとつです。数理物理の中でも量子力学や場の量子論などに現れる物理模型を主な研究対象としていますが、研究に使う道具は「数学」です。(計算ソフトを使うこともありますが、その場合でも最後の詰めは数学です。)研究室の学生は、数学の専門書や論文について予習してきた内容を教員や他の学生の前でゼミ形式で発表します。ゼミを通して研究に必要な道具をそろえたら、各自設定したテーマに関する研究を行います。卒論のテーマとしては、結晶や曲面の変形に対し、その上を運動する粒子の振る舞いがどのように変化するかを数学的に解析する研究などがあります。卒業後の進路は一般企業や公務員などへ就職の他、大学院に進学してさらに研究を深める学生もいます。研究シーズ共同研究・外部資⾦獲得実績社会貢献実績研究キーワード数理物理学・量⼦論・量⼦ウォーク・無限グラフ・スペクトル解析・散乱理論【先生の学問へのきっかけ】高校時代、大学に入ったら物理学を勉強して、「自然現象の謎を解明したい」と思っていました。ところが私にとって、高校数学はわからないことだらけでした。実数とは何か?微分って結局何なのか?積分が面積を表すというけど、そもそも面積ってどうやって定義するのか?そこで私はこう考えました。「物理を勉強するのに、数学を知らないわけにはいかない!」「それなら、いっそ物理学科ではなく、数学科に入学して、物理学科の学生より強力な数学力を身につけ、物理は独学して、他の学生を圧倒しよう!」ところが、高校時代の数学に対する疑問は、数学科に入って解消したのですが、大学では物理がわからなくなってしまいました。高校までの計算一辺倒の数学とは違い、大学での数学は細かいところまできちんと証明する学問です。それに慣れると、物理学の理論展開の細部に疑問を感じるようになったのです。物理を知るために、数学を勉強したら、物理がわからなくなった!私の目論見は崩壊しました。そんなとき出会ったのが、現在の私の専門である「数理物理学」というものです。物理学科の学生が勉強する「物理数学」というものがありますが、似て非なるものです。「数理物理学」は、物理現象を数学的に厳密に証明したり、時には解析に必要な新しい数学手法を作って物理現象を詳しく調べたりする学問です。いまは、数学的な立場から、物理現象をより深く理解しようと日々努力しています。•量子ウォークにおける漸近速度と弱収束定理•量子ウォークの量子探索アルゴリズムへの応用•無限グラフ上のラプラシアンのスペクトルとBECの研究(若手(B))•曲がった時空上の場の量子論のスペクトル解析とその応用(若手(B))•量子場と相互作用する量子系のスペクトル解析(研究活動スタート支援)128

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