工学部研究紹介2017|信州大学
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研究から広がる未来卒業後の未来像浅速流で発電する下掛けタイプの衝動水車。水車は橋からぶらさげた2本の支柱で支えている。得られた電気は水路脇の民家で利用湧水で発電する滝水車(左)と、温泉水によるジェット水流で発電するジェット水車(右)。それぞれ電気柵と衛星電話の電源に利用飯尾研究室純国産最大の再生可能エネルギーである『水力』。水力発電と言えば山奥にダムを建設する大規模発電所の印象がありますが、これからの水力発電は小規模分散型。それを実現するのが、飯尾研究室で行っている自然環境にやさしい『Eco(エコ)水車』です。身近な水路の『流れに置くだけ』で発電し、水力の地産地消が可能です。総延長40万kmにもなる日本の農業用水路を流れる水力エネルギーの活用を目指しています。全発電方式の中でライフサイクルCO2排出量が最も少ない小規模水力発電は、地球温暖化防止の観点からも注目を集めています。Eco水車開発では、室内基礎実験から実際の水路でのフィールドテスト、実用化まで広範囲に実施しています。水路の形態によって異なる水流状況にあわせて数種類の水車を開発しています。高性能かつ低コストの水車発電機の実現を目指し、人工河川での性能評価実験やコンピュータシミュレーションによる水車形状の最適化などを行っています。学生たちにとって、自ら手掛けた水車が実用化される喜びは大きいようです。これまでの卒業生は、水力発電機器、自動車、プラント、ポンプ、空気圧機器、空調設備、工作機械等の機械関連業界に就職し、設計や商品企画、研究開発などの『ものづくり』担当のエンジニアとして国内外で幅広く活躍しています。飯尾昭一郎准教授宮崎大学博士後期課程修了後、信州大学工学部助手、同助教を経て、2011年より現職。主な研究分野として、流体力学を基礎とした環境にやさしい小型水力発電、流れの省エネルギー制御・可視化に取り組んでいる。『Eco⽔⾞』〜流れに置くだけの⽔⼒発電機械システム⼯学科研究シーズ共同研究・外部資⾦獲得実績社会貢献実績研究キーワード流体機械・流体計測制御・流体解析・創エネルギー・省エネルギー・流⼒騒⾳/振動【先生の学問へのきっかけ】大学は工学部の機械系学科に進学しました。小さい頃からメカいじりが好きで、進学時に「機械」「ものづくり」に関する勉強をしたいと漠然と考えるも、物理、数学が大の苦手でした。当時の担任から、「成績基準ではなく、好きなことを目指せ」と言われ、機械系学科への進学を決めました。興味があったので勉強も研究も苦ではありませんでした。研究はやればやるほど課題が出てきます。その中から解決の糸口を探る毎日は楽しいですね。皆さんにとって大学は大きな目標でしょうが、通過点に過ぎません。将来を見据えた進路選択がお勧めです。•流込式水力発電に適用する低コスト水車の開発•上水道の極低比速度地点向け衝動タービンの開発•小水力発電用除塵装置の開発•アクアドライブシステム(ADS)用高効率水圧変換装置(ACA)の開発•水圧用流量制御弁におけるキャビテーション現象の評価と対策•空気圧を利用した非接触搬送装置内部の旋回流不安定性の予測と対策•亜音速,超音速噴流の流れ特性の解明と制御•落差工に適用するプロペラ水車の開発(民間企業との共同研究)•低コストクロスフロー水車の開発(民間企業との共同研究)•トルクコンバータ装置の性能向上に関する研究(民間企業との共同研究)•小水力発電用無動力除塵装置の開発(民間企業,国立研究開発法人との共同研究)•レーザ導入ウォータージェット加工機に関する研究(民間企業との共同研究)•身近な流れで発電する環境調和型ナノ水車発電ユニットの実証研究(NEDO)•音波による噴流制御技術の開発(JST)•ナノ水車発電ユニットの高性能化等技術の開発(環境省)•大気圧プラズマジェットの能動制御による表面改質効果の可能性評価(科研費(若手研究B))•水車導水部における自由表面流れの不安定性制御(科研費(若手研究B))•水流の表面波動抑制による水車性能向上に関する試み(科研費(基盤研究C))国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)ピアレビュア日本学術振興会科学研究費助成事業審査委員一般社団法人ターボ機械協会理事108

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