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信大キャンパスの樹上田キャンパスサイカチ文・写真/荒瀬 輝夫No.02鋭い棘を纏う頑固親父、サイカチは古の石鹸。サイカチはマメ科の落葉高木。主に暖温帯の植物で、本州中南部から四国・九州に分布する。漢字では「皂莢」「西海子」などと書き、川沿いに自生していることが多く、「河原藤」の異名もある。上田キャンパスのサイカチの木は、横枝を四方に伸ばして見事な天蓋状の樹冠をなし、その下に広く涼しげな木陰を落としている。しかし中央にある幹に近寄ってみると、幹や枝が鋭い棘を突き立てている。何よりサイカチを特徴づけているのは、この棘である。ときに長さ十数㎝におよぶ棘は、枝の変化したもので、枝分かれまでして棘の塊となる。老木でも、棘がなくなることはない。木登りはもちろん、幹に背をもた写真左は塊状の棘。写真右は偶数の小さい葉(小葉)が鳥の羽のように並んで一枚の葉をなす「偶数羽状複葉」。サイカチ(Gleditsia japonica Miq.)樹高8.5m、幹の胸高周囲126cm。サイカチを特徴付ける棘と葉ま とと げいにしえ09上田キャンパス信大NOW No.71 2011.9.30 掲載れて休むことも一目で憚られる雰囲気である。派手な棘のほかにも、うねりながら長大に伸びてぶら下がる黒い豆果も壮観である。豆果にサポニンを含むため、石鹸の普及する以前、洗剤やシャンプーとして用いられてきた。サイカチは古くは日常生活に役立ってきた有用植物であった。この様な植物の利用法は、大昔の人々による累々たる試行錯誤の成果である。それが忘れられてゆくのも時代の流れとはいえ、人間とは身勝手なものだ。そんな人の都合などどこふく風で、野生のままの鋭い棘を留めつづけるサイカチには、筋金入りの頑固親父のような孤高さと一徹さを感じる。機能機械学棟機能機械学棟図書館図書館正 門

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