shindainoki_32web
8/32

信大キャンパスの樹松本キャンパスヒイラギ文・写真/岡野 哲郎No.01松本キャンパス08信大NOW No.70 2011.7.25 掲載理学部理学部本部本部棘のない葉は円熟の域、老木ヒイラギの風格。ヒイラギはモクセイ科の雌雄別株の常緑低木で、関東以西の暖かい地方-暖温帯-に分布する。おそらく理学部玄関前のヒイラギは、いずこかの地から連れてこられ植栽されたものであろう。ヒイラギは漢字で「柊」と書く。常緑樹であるから冬でも深緑の葉を茂らしているが、そればかりではなく香り高い花が咲くのも冬である。それゆえ花は冬を表す季語とされ、木へんに冬という漢字はまさに似合いと思われる。しかし、ヒイラギの語源は、ひりひり痛むという意味の古語「ひひらぐ」からで、疼ぐと書く。これは堅く分厚い葉の縁に棘状のするどい突起があり、これが皮膚に刺さるとまさに「ひひらぐ」ことに因む。つ写真左は伊那キャンパス構内演習林に生育する若木(樹高約1m)の葉で、全ての葉が鋭い棘を持つ。写真右は理学部玄関前のもの。ヒイラギ(Osmanthus heterophyllus P.S. Green)樹高4.2m、根本幹周囲1.9m、樹冠直径約5m。ヒイラギの葉:若木と老木の比較まりは痛い木なのである。ところが、理学部玄関前のヒイラギでは、ほとんどの葉に棘が見あたらない。ヒイラギが鋭い棘を付ける葉を茂らすのは若木の時代で、老木では棘のない葉に変化するのである。棘は、草食動物により葉のみならず枝や幹までをかじられることに対する抵抗のためのツールと考えられている。特に小さな若木の段階では、ほんの少しでもかじられることで生死に関わるほどの深刻な事態に陥るが、ある程度大きくなってしまえばそれほどの心配は無くなる。だから葉の棘は不要となる…といっては言い過ぎであろうか。とにかく「進化の妙」である。西 門正 門と げ

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る