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31我が国は温暖・多雨な気候に恵まれ、樹木が育たない地域はほとんどありません。まさに「森林国」と言えましょう。さらに現在の気候環境のみならず太古より氷河の影響が小さいこともあって、小面積の国土でありながら分布する樹種は極めて多様です。信州に限って見ると、高標高地域であり比較的冷涼な環境であるため落葉広葉樹が主となりますが、その種数の多さは特筆に値すると思います。このような特性を持つ地域に所在する信州大学において、広報誌に「信大キャンパスの樹」の連載依頼をいただいた折り、大いに意義あることと感じ、自らの作文能力も省みずお受けしました。初回のヒイラギから幾度となく各キャンパスを巡り、写真撮影を含め取材、というより物色を続けました。人には「人相」が、森林には「林相」があるように各キャンパスにも「相」があって、それぞれ特徴に富んでいることを知りました。建物のデザインや道の通り具合はもちろんですが、そこに生きている樹木の種類や配置も、キャンパスの相を特徴付ける重要な要因ではないかと思います。しかし我が国は森林国であるがゆえ、樹木はあって当たり前という感覚が通常です。ですから身近な樹木を知り精神的な距離を縮めるためには、意識を持って観察することが肝要のようです。本学教職員、学生、さらには本学を来訪された方々に、キャンパスを彩る樹木に興味を持ってもらえるよう、その一助を本冊子が果たせれば何よりと思います。そして樹木を始めとしたキャンパスの緑を大切にしていく気持ちが、今以上に高まっていくことを切に願います。樹種にもよりますが、人間の寿命を遥かに超えて数百年の時を生きるものも少なくありません。身近に長寿な樹木を見、触れることができる我が大学キャンパスの環境は、潤いや安らぎを私たちに与えてくれます。何かと世知辛い現代において何と素晴らしいことでしょうか。キャンパスの樹は信州大学として大切な財産、それも数年という短期間で得ることのできない宝です。広報誌『信大NOW』では平成23年からの4年間で計23回にわたる連載となりました。マンネリを少なからず感じながらも、少しでも樹木の面白さをお伝えできればと、最大限の努力を払ったことに嘘はありません。これらを纏めたものが本冊子ですが、私たちの文章のつたなさゆえにお読み苦しい点も多々あるものと思います。どうかご容赦のほどをお願いします。最後になりましたが、本企画の立案から発刊に至るまで、笹本副学長はじめ広報室の皆様には大変お世話になりました。懐中より感謝致すところです。 学術研究院 教授(農学系)環境共生学分野・山岳環境保全学岡野 哲郎31あとがき 学術研究院 准教授(農学系)環境共生学分野・山岳環境保全学荒瀬 輝夫平成27年9月

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