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信大キャンパスの樹松本キャンパスカツラ文・写真/岡野 哲郎No.21松本キャンパス28信大NOW No.90 2014.11.28 掲載秋風にカツラの香り、主は何処と渓谷を探る。カツラはカツラ科の落葉樹。日本固有種で北海道から九州に分布する。山地の沢沿いによく生育し、渓畔林を代表する樹種のひとつで、直径2m、樹高30mに達する大木にもなるという。古木では沢山の幹が株立ちし、最も太い幹が寿命に達すると、次に太い幹がその株の主となる。このため年輪を数えても、幹の年齢を知ることはできるが、個体、つまり株としての樹齢を知ることはできない。いずれにせよ長寿な樹木なのである。雌雄別株で、雄花、雌花ともに葉を開く前の早春に小さな紅紫色の花を咲かせる。残雪のまぶしい渓谷に、春の到来をいち早く知らせてくれる。葉は3~8cmの広卵形で、基部がハート形のものが多く、可愛らしい形である。秋には鮮やかに黄葉し美しく、このため庭園木として植栽される。黄葉した葉は甘い独特な香りを発し、「香出ら」がカツラの語源とも言われる。漢字で桂や連香樹があてられるのは、乾燥した葉を粉末にし、お香に用いたことからとされる。材は狂いが少なく加工性に優れており、特に黄色みのある材はヒガツラと呼ばれ高級材とされる。家具材、器具材、漆器木地などに用いられ、将棋盤や碁盤の材としても優秀である。松本キャンパスの西門から正門にかけて、カツラが列状に植えられている。将来、大木のカツラ並木となり、見事な黄葉が校内のみならず沿道をも飾ることであろう。景観のみならず香りも楽しみたいものだ。秋には雌株に沢山の果実がつく。まるでバナナのような形をしている。熟すと黒紫色となり裂開し小さな種子を飛ばす。カツラ(Cercidiphyllum japonicum Sieb. et Zucc.)樹高13.5m、幹の胸高周囲132.5cm。中央図書館理学部西 門

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