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信大キャンパスの樹伊那キャンパスヤマボウシ文・写真/荒瀬 輝夫No.20洒脱なる白頭巾、山法師の遊び心。ヤマボウシはミズキ科の落葉小高木。本州から九州、朝鮮半島に分布し、山地に普通に見られる。自然な樹形を楽しむ庭木としても植栽される。伊那キャンパスでは、演習林棟前の数本の立木群が目を惹く。他のキャンパスでも並木として植栽されている。梅雨時、雪で樹冠を覆うかのように、大きな4弁の白い花が咲き乱れる。中国名で「四照花」という。じつは花弁に見えるのは総苞片という葉の一種で、中央にある緑色の塊(20~30個の小花の集まり)が花の本体だ。総苞片を白頭巾に、花の本体を坊主頭に見立て、比叡山の僧兵にたとえたのが「山法師」の名の由縁とされる。花後、緑の坊主頭が居住まい正し純白な総苞片が目立つ多数の花。それぞれは小さな花の集合したものであることが、果実の形態でよくわかる。ヤマボウシ(Cornus kousa Buerger ex Hance)樹高9.4m、幹の胸高周囲63cm。27信大NOW No.89 2014.9.30 掲載くツンと突き立つさまも法師に見てとれる。小花はやがて1つに合生して丸い果実になり、熟す頃には少し頭を垂れる。赤い果皮の中は白い果肉で、酸味はなくアケビに似て甘い。同じ頃、橙から赤に色づく紅葉も美しい。さてこのヤマボウシ、材が硬く粘りがある。とくに北国では、強靭なカシ材の代用として鍬・槌・杵・掛矢など農具の柄に用いられた。中でも掛矢(杭を打ち込む木製の大きな槌)には、全国的にもヤマボウシが最適とされる。小正月に団子を飾る木として、ヤマボウシの枝を用いる地方もある。花・実・紅葉の三拍子揃った役者であるばかりか、暮らしも支える重宝な木だ。伊那キャンパス管理棟演習林しゃだつ正 門

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