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信大キャンパスの樹伊那キャンパスダンコウバイ文・写真/荒瀬 輝夫No.18ダンコウバイの浅黄色、冬越えし山辺は萌え始め。ダンコウバイはクスノキ科・雄雌異株の落葉低木。新潟以南、関東以西の低山に分布し、庭園木にされることも多い。漢字で「壇香梅」と書くが、香梅はロウバイ(蝋梅)の仲間のことで、花の香りが似ているからという。伊那キャンパスでは、演習林棟前の緑地に植栽されているのをはじめ、キャンパスを囲む演習林内にも自生している。楊枝で有名なクロモジの仲間だけに、若枝や樹皮を切ると芳香がある。かつては果実から油を絞り、朝鮮半島では髪用の高級油とされた。葉は花後に開き、卵形で先がふつう3裂し、大きいもので手のひらくらいになる。子ども向けには「恐竜の足跡」や「チューリップの花の形」と喩えると分かりやすい。先が3裂する葉は特徴的で、他に区別が難しい樹種はない。この写真の通り、3裂しない葉も混じることに注意が必要だが、これもダンコウバイの特徴といえる。ダンコウバイ(Lindera obtusiloba Blume)樹高6.2m、幹の胸高周囲27.4cm他数本。25信大NOW No.87 2014.5.30 掲載ダンコウバイの何よりの特徴は、まだ肌寒く他の木々が冬芽を硬く閉ざす早春に、真っ先に開花することだ。球状に集まった浅黄の花が梢という梢を飾り、一つ一つは小さくとも大量の花をつける。まるでお祭り騒ぎで、蓄えを使い切って木が枯れるのではと毎年心配になるほど。花が粟飯のように見えるので「アワモリ」、早くに咲くので「タニイソギ」「白ヂシャ」など(チシャは菜の花との説あり)の方言がある。夏の間は生い茂った葉で粛々と蓄えを稼ぎ、秋には美しく黄葉してまた人目を惹き、冬の訪れを前に惜しげもなく葉を散らす。そして再び翌春のお祭りで弾ける。何とも伊達で真似できないが、あっぱれ、四季折々を体現した派手やかな生き様だ。伊那キャンパス管理棟演習林正 門

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