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信大キャンパスの樹伊那キャンパスハリギリ文・写真/岡野 哲郎No.17伊那キャンパス24信大NOW No.86 2014.3.31 掲載深山幽谷、寂寥感をハリギリと愉しむ。ハリギリはウコギ科の落葉高木で、北海道から九州に、海外では南千島、サハリン、朝鮮半島、中国に分布する。大木では樹高30m、直径1mにもなる。暖温帯の照葉樹林から冷温帯の落葉広葉樹林まで、その分布範囲は広い。農学部構内演習林のハリギリは、直径は60cmほどであるが、樹高は27mに達する。花は夏。地味で小さな花が球形に集合した散形花序を付ける。比較的若い枝や幹には鋭い刺が多く、葉がキリに似ていることから、ハリギリという名がついた。葉は10~30cmと大型で、秋には黄葉し、キリよりもカエデの葉にそっくりの掌状を呈する。その大きさといい、形といい、まさに天狗の団扇である。製材品では別名であるセンノキという名を使うことが多いようだ。また長野県や岐阜県では、エンダラという地方名が知られている。ウコギ科の樹木には、山菜として食されるタラノキ、コシアブラ、薬用に用いられるエゾウコギなど、生活と関わりの深い種が多くある。ハリギリの新芽は、灰汁が強いためあまり食されないが、十分に灰汁抜きをすれば美味である。材はケヤキに似ているため、その代用材として家具などに用いられる。かつては下駄材としても利用された。樹皮は黒みが強く、地味な樹木であるが、食用から材の利用まで、なかなか多才な樹木といえよう。ハリギリは群生することなく、単木で森林内に生える。しかしその堂々とした姿は力強さにあふれている。カエデにそっくりなハリギリの葉。カエデの葉は対生(2枚が対になって付く)で、ハリギリは互生(互い違いに付く)であるため容易に見分けられる。ハリギリ(Kalopanax septemlobus Koidz.)樹高27m、幹の胸高周囲186cm。演習林管理棟正 門

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