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信大キャンパスの樹上田キャンパストウカエデ文・写真/荒瀬 輝夫No.16唐楓は三百年来の古参、逞しさに紅葉美を纏う。トウカエデは中国の長江一帯や台湾に自生するカエデ科の落葉高木。漢字で「唐楓」と書く。かえでの仲間ながら葉は掌状でなく、先が浅く3裂するだけのシンプルな形(漢名:三角槭)で、やや厚く光沢があり、裏面粉白色、鋸歯も毛もないという変わり者だ。繊維学部キャンパスには、事務棟の近くに見上げるような大木があり、講堂の裏手の道沿いにも数本ある。秋には黄・橙をへて紅色に染まる紅葉が見事だ。細かく裂けてケバ立つ樹皮、老木になるとコブ状に膨れる幹も特徴である。外来種ながらその歴史は古く、享保年間、ザクロとともに清国から長崎に渡来したという。東京の小石川植物園と浜離宮には幹周3m以上の巨木があり、伊独特の形をした葉の紅葉。種子は翼を着けた2個が対になったV字型で、枯草色となって春まで枝先に残ることが多い。トウカエデ(Acer buergerianum Miq.)樹高20m、幹の胸高周囲262cm。23信大NOW No.85 2014.1.31 掲載藤伊兵衛(ソメイヨシノで知られる江戸染井の植木屋当主)が接木したとか、浜離宮のものは将軍吉宗のお手植えである、といった説がある。いずれにせよ、当時からの現存とすれば、約三百年の時を生きた日本最古のトウカエデである。トウカエデの用途は、もっぱら庭園木や街路樹で、盆栽に仕立てられることもある。潮風に強く、大気汚染や乾燥にも強い。昭和9年の室戸台風による暴風・高潮が大阪湾沿岸地域を襲った際、築港の並木で真っ先に葉を再生した樹木がトウカエデである。さらに遠い異国の信州で、暖かい潮風ならぬ冷たい風雪にも負けず、威風堂々大木となる。その順応力と逞しさにあやかりたいものだ。上田キャンパス機能機械学棟事務棟図書館正 門

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