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信大キャンパスの樹長野(工学)キャンパスアオギリ文・写真/荒瀬 輝夫No.14アオギリは何処からの使者、種子を乗せた舟、風に託して。アオギリはアオギリ科の落葉高木で、日本産説と中国南部からの渡来説とがある。まっすぐ伸びる幹から、毎年、輪生する枝を多数出す。古来、中国では鳳凰のすむ瑞祥木とされ、枝ぶりから王室の子孫繁栄の象徴とされた。樹皮は平滑で青緑色、太くなると灰色の縦皺が入る。掌状の大きな葉がわさわさと茂るさまも特徴的で、根元から梢まで緑一色となる。樹皮の青、桐に似た葉が和名の由来で、漢字で「梧桐」と書く。盛夏、枝先に大きな花序を出し、果実は5つに裂けて舟のような形となり、その縁に丸い種子が数個つく。種子は舟ごと風で散布される仕組みだ。秋の訪れを意味する「桐一葉(きりひとは)」は、アオギリの落葉をさすという。「少年易老学難成」で始まる幹は平滑。直径25cmたらずであるが、すでに灰色の縦皺(皮目)が入り、美しい紋様となっている。アオギリ(Firmiana simplex W.F.Wight)樹高8m、幹の胸高周囲78cm。21信大NOW No.83 2013.9.30 掲載『偶成』、杜甫『長恨歌』など、多くの漢詩に梧桐が秋や雨の情景として詠まれている。また、漱石の『吾輩は猫である』に主人宅の庭木としても登場する。アオギリは文人好みの樹木のようである。アオギリは成長が速く、移植も栽培も容易で、街路樹や庭園木として栽植される。広島の原爆を生きぬいた稀有の樹木でもある。樹皮の繊維は水に強く布や縄に、粘性物質は製紙用の糊料に使われた。種子はカフェインを含み健胃薬になる他、飢饉時の食用にも。親木は種子を舟に乗せ遠くへと送り出す。船出した種子はやがて発芽し、まっすぐ緑豊かに成長し枝を広げる。大学の教育もかくあるべきか。長野(工学)キャンパス物質工学科南棟物質工学科南棟体育館体育館グラウンドグラウンド

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