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信大キャンパスの樹松本キャンパスエノキ文・写真/岡野 哲郎No.13松本キャンパス20信大NOW No.82 2013.7.29 掲載大樹冠がつくる緑陰下、榎木僧正に省みる。エノキはニレ科の落葉高木で、本州から沖縄に、海外では中国中部に分布する。樹高20m、直径1mほどになり、太い枝を横に広げ、大きな樹冠をつくる。かつて街道の一里塚によく植えられたのは、緑陰樹としても適していたからか。松本キャンパス、医学部資料室近くに2本のエノキが仲良く立っている。花は葉が展開する春に咲き、地味で目立たないが、実は小型ながらもたくさん付け、秋には赤色に熟し、そこに集まる小鳥の大好物となる。エノキの語源は小鳥の「餌の木」からという説があり、その他、材を農機具などの柄に用いることから「柄の木」、はたまた太い枝を伸ばすことから「枝の木」とするなど諸説あって、定説はない。材はあまり上等ではないが、堅くて緻密であることから、ケヤキの代用として建材、家具材、器具材に、また、樹皮や葉は生薬として用いられたという。エノキは社寺林、屋敷林や街路樹として植栽されるとともに、里地に近い雑木林にも少なくない。『日本書紀』や『万葉集』にも登場することから、古くから身近な存在であったといえよう。何より有名なのが『徒然草』「榎木僧正」である。このあだ名が気に食わず、寺のエノキを切ってしまうほど、短気でへそ曲がりな人物の話であるが、何も悪くないエノキにとっては迷惑なことである。何かと世知辛い昨今、エノキを仰ぎ見、短気になりがちな自分を省みることしばし。葉の基部は左右不対称で、主脈と2本の側脈が太く目立つ。国蝶オオムラサキの食餌となる。エノキ(Celtis sinensis var. japonica Nakai)樹高17m、幹の胸高周囲230cm。プール医学部保健学科東 門

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