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信大キャンパスの樹伊那キャンパスアカマツ文・写真/荒瀬 輝夫No.12恩恵と畏敬、アカマツは人の暮らしとともに。アカマツはマツ科の常緑高木。北海道から九州、朝鮮半島、中国東北部に分布する。伊那キャンパスには、演習林をはじめ、建物周辺の緑地や農場にも大木が点在する。正門からつづくユリノキ並木の淡緑のトンネルを過ぎると、アカマツの濃緑の点描が視界に飛び込む。中々の景観美である。多くの立派なアカマツ大木を見ることができるのは、全国的に今や貴重だ。松枯れ(材線虫病)のため、各地のマツ林が危機的な状況にあるからだ。アカマツは、乾燥気味の痩せ地や崩壊地でも生育旺盛で、低山帯の至る所に自生する。真冬でも緑という生命力への畏敬からか、めでたいものの代名詞「松竹梅」や正月の「門松」が示すように、日本人との関わ伊那キャンパスに生育するアカマツの大木群。これらの多くは天然木で、ユリノキとともに農学部のシンボル。アカマツ(Pinus densiflora Sieb. et Zucc.)樹高22m、幹の胸高周囲223cm。19信大NOW No.81 2013.5.31 掲載りが強い。そうした神聖な木が伐られて、材・根・樹脂・樹皮や葉まで利用しつくされるのも面白い。例えば、材は建築・土木材料や燃料に、樹脂の多い根は松明(たいまつ)にされた。樹脂からは精油(テレビン油)が得られ、その残りが固化するとロジンとなる。弦楽器の弓の塗布剤やスポーツ競技の滑り止めとして有名だ。また、松などの樹脂が地中で長い年月をかけて固化したものが宝石の琥珀である。森林が伐採・利用されるようになって以降、アカマツが増加したという説もある。そのようにして分布を広げ、利用され崇められてきた身近な樹木。「山高きが故に貴からず、樹あるを以って貴しと為す」という成句が思い浮かぶ。伊那キャンパス管理棟演習林正 門

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