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信大キャンパスの樹伊那キャンパスカラマツ文・写真/岡野 哲郎No.11伊那キャンパス18信大NOW No.80 2013.3.29 掲載カラマツは中部山岳の雄、十勝開拓の歴史を刻む。カラマツは中部山岳地域を主な自生地とする落葉針葉樹で日本固有種。樹高20m以上にも達する高木で、別名フジマツ、ニッコウマツともいう。農学部構内の学生寮に続く道の両側に街路樹として植栽されていて、秋の黄葉は美しく、また春の芽吹きは伊那谷に厳しい冬の終わりを告げる。枝には小さなコブが沢山あって、その先に針葉が束となって着いている。実はコブではなく短枝(たんし)と呼ばれる枝なのである。芽吹いたばかりの短枝上の芽の可愛らしさは、宮沢賢治をして「からまつの芽はネクタイピンにほしいくらゐだし」と言わしめたほど。カラマツは寒冷な気候下で旺盛に成長する特性から、北海道や東北北部に信州産の苗木が持ち込まれ植栽された。人工林造成に一役買ったほか、カラマツによる十勝平野の耕地防風林も有名である。成長が速いことに加え、カラマツは落葉樹であるため、芽吹き前では日陰をつくらず、畑の雪解けを遅らせないのである。明治時代に始まった十勝の開拓にとって、他に替えがたい樹木であった。今や樹齢100年を越すものもある。しかし、大型農業用機械の普及に伴い、防風林は邪魔者扱いされ伐採が進み、景観維持の観点からも問題とされた。近年、作物を強風から守る防風林本来の機能が見直され、再生の動きも出始めた。カラマツに、開拓者の苦労と知恵を垣間見る。球果が紅色を帯びる個体がある。アカミカラマツと呼ばれる変種の一つで、長野県に分布する。写真はAFC野辺山ステーションで撮影。カラマツ(Larix kaempferi Carr.)大きいもので樹高29m、幹の胸高周囲184cm。管理棟グラウンド並木正 門

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