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信大キャンパスの樹長野(工学)キャンパストチノキ文・写真/岡野 哲郎No.09長野(工学)キャンパス16信大NOW No.78 2012.11.30 掲載トチノキの大樹の下、沢山の実を拾う幸せ。トチノキは北海道から九州に分布するトチノキ科トチノキ属の落葉高木で日本固有種。樹高30mにも達する巨樹となる。蜂蜜で有名なマロニエと同属の近縁種である。工学部土木工学科棟前にあるトチノキは、幹周囲120cmほどのまだ若い樹であるが、掌状の大きな葉をこんもりと繁らせている。初夏には枝先に円錐形の花序を出し、多数の白色の花を着ける。ミツバチを誘うのも頷けるほどに立派な出で立ちだ。秋には黄葉し美しく、公園の緑陰樹や街路樹としてよく植栽される。自然では、渓流沿いなどの地味豊かな場所に自生することが多い。夏が終わろうとする頃、3~5cmほどの実を沢山つける。熟すると3つに割れ、中からツヤツヤとした褐色の、まるで栗のような大粒の種子が出てくる。種子の中身は、デンプンなどの養分で満たされていて、発芽後の旺盛な成長の源となる。後継樹、つまり子供達への親木からの慈愛に満ちた贈り物なのである。しかし、それゆえに野生動物のご馳走として狙われることとなる。なんとも皮肉な自然のシステムである。デンプンが豊富なトチノキの種子は、保存性がよいことから、古くは救荒食として利用された。今日では、栃餅の材料として用いられるが、強いアクを抜くために手間暇を要する。渋味を持つ素朴な味。刺激を求める現代の食にはない、優しさと豊かさを感じる。上の3つは熟して3つに割れた果実。下の4つは径2~3cmほどの種子。愛嬌のある色と形だ。トチノキ(Aesculus turbinata Blume)樹高13m、幹の胸高周囲120cm。土木工学科棟土木工学科棟総合情報センター総合情報センター太田国際記念館太田国際記念館至正 門至正 門

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