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信大キャンパスの樹上田キャンパスマグワ文・写真/荒瀬 輝夫No.08洋の東西を結ぶクワの木、衣・食・住に余すところなし。クワといえば、明治以降の日本の近代化を支えた養蚕・製糸が思い浮かぶ。栽培種(マグワ)は中国と朝鮮半島が原産で、野生種(ヤマグワ)は東アジアに広く分布する。雄雌異株の落葉樹で、枝葉を摘まれずに成長すれば高木になる。葉の形は、三角状楕円形から手のひら形まで様々だ。繊維学部では、多くのクワの品種が研究・保存用に栽培されている。欧米では、クワは英名でマルベリーと呼ばれ、養蚕より甘酸っぱい果実のほうが馴染み深く、食用・薬用などに利用される。日本でもクワの実は食用にされるが、子どもや愛好家を楽しませる程度か。ちなみに、落雷よけのまじない「くわばら、くわばら」というのは、雷様が桑原に落ちてひどい目に遭い、二度とそこには落ちないと果実は、小さい果粒が縦長に集合した液果で、赤色をへて黒紫色に熟する。ヤマグワ(右、伊那キャンパス構内)に比べ、マグワの栽培品種(左)の葉や実は大きく壮観。マグワ (Morus alba L.)様々な品種が、繊維学部附属農場で栽培されている。樹高6mほど。15上田キャンパス信大NOW No.77 2012.9.30 掲載約束したという伝説に由来する。葉・実以外にも用途は多様で、材は堅く、磨けば深い黄色となり美しい。枝の皮は和紙の材料に、刻んだ材や根は衣服を茶色に染める染料に、根皮は桑白皮と呼ばれる生薬に用いられる。さらに、クワに寄生するメシマコブ(菌類)やヤドリギは、クワについた場合に薬効を持つとされる。まるで、クワの木から力を分けてもらっているかのようだ。クワ科には有用樹が多いが、クワほど、葉・実・材・枝・根、更には寄生物まで余すところなく使い尽くされる植物も珍しい。世界各地に伝わり好まれる所以は、旺盛な生命力と多種多様な役立ち方にあるのだろう。機械蚕室附属農場至正 門至正 門

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