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信大キャンパスの樹松本キャンパスシナノキ文・写真/岡野 哲郎No.07あかし なのき松本キャンパス14信大NOW No.76 2012.7.31 掲載科野の木、その花の香閼伽に相応しきほど。シナノキは北海道から九州に分布するシナノキ科シナノキ属の落葉高木で日本固有種。大きいものでは樹高20mにも達する。我が国ではオオバボダイジュやヘラノキが、海外ではシューベルトの歌曲で有名なリンデンバウムも本種と同属の近縁種である。鬱陶しい梅雨時の6月下旬、多数の黄白色の小花を房状に着ける。花を着けている枝のような部分-花梗(かこう)には、長いヘラ状の総包葉(そうほうよう)があり、本種を含めシナノキ属樹木の特徴である。松本キャンパス西門脇にあるシナノキは樹高11mの中くらいのサイズだが、枝先が垂れるほどに沢山の花を着け、奥ゆかしく心安らぐ香りを発する。ハーブティや蜂蜜、石鹸、化粧水などに利用されるのも頷けよう。樹皮からは丈夫な繊維が採れ、古くは荷縄、蚊帳、馬の腹がけ、漁網などに利用したとされる。現在では材がベニヤの原料として用いられる。地味な樹木ではあるが、なかなか多才であることに驚かされる。シナノキの名の由来は、アイヌ語のシニペシ(この木から採れる繊維の名)からとする説、しなしなの繊維が樹皮から採れるからとする説、科野(長野県の古代名)に多い木であるからとする説、という具合で定説はない。またシナノキがボダイジュの別名を持つのは、その下でお釈迦様が悟りを開いたとされるインドボダイジュ(クワ科の常緑樹)と葉の形が似ていることに起因するが、花の香りにお釈迦様をイメージしてしまうのは私だけであろうか。径1cmほどの黄白色の花を房状(集散花序)に沢山着ける。小さな玉状のものは開花前の蕾。派手なヘラ状の総包葉からヘラノキの別称も持つ。シナノキ(Tilia japonica Simonkai)樹高11m、幹の胸高周囲99cm。中央図書館中央図書館理学部理学部経済学部経済学部西 門

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