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信大キャンパスの樹伊那キャンパスエドヒガン文・写真/岡野 哲郎No.05伊那キャンパス12信大NOW No.74 2012.3.30 掲載長寿を誇るエドヒガン、大木に野生種の美を観る。エドヒガン(江戸彼岸)はバラ科の落葉高木。我が国では本州、四国、九州に分布する野生の桜。江戸時代以降ソメイヨシノに代表される様々な品種が作出されてきたが、エドヒガンは木によって花色に濃淡があり変化に富むため、多くの品種の親として使われてきた。シダレザクラはエドヒガンの一品種、高遠城跡のタカトオコヒガンもエドヒガンの血統を継いでいるらしい。桜といえば春のお花見。花より団子とはいうが、やはり桜の花が咲き乱れてこその団子であろう。田の作業を知らせる雪形が気にかかる季節、アルプスの峰々と花霞が織りなす里地の景観は、信州ならではの美しさといえよう。花弁の付け根に丸くふくれた壺状の萼筒(がくとう)を横向きの花に見ることができる。エドヒガンの特徴の一つ。エドヒガン(Prunus pendula f.ascendens Ohwi)樹高24.2m、幹の胸高周囲341cm。エドヒガンは長寿の桜としても知られ、神代桜を始め、樹齢数千年と推定される大木も少なくない。花は小ぶりだが、大木の枝々が満開となった姿は見事で、ソメイヨシノでは味わえない、野生種にこそ漂う風情がある。伊那谷に所在する伊那キャンパスには沢山のエドヒガンが自生していて、4月中下旬、植栽された桜とともにキャンパスを桜色に彩る。ワシントン市に12品種3000本の桜が贈られ、ポトマック公園に植栽されて、今年は100周年にあたる。この中にはエドヒガンを親とする品種も含まれている。慣れ親しんだキャンパスの景色ではあるが、この春は気分も新たにエドヒガンの野生美を味わってみたい。正 門

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