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信大キャンパスの樹長野(教育)キャンパスカラコギカエデ文・写真/荒瀬 輝夫No.04和鋏のような造形の妙、カラコギカエデ果実の華。カラコギカエデはカエデ科の落葉小高木。葉の形は卵状楕円形で不規則に切れ込む。羽根をもつ果実が二個ずつつき、カエデ類独特のプロペラ形になるが、カラコギカエデでは羽根のなす角度が狭い。昔、どこの家の裁縫箱にもあった和鋏(握り鋏)を思わせるような不思議な形である。カラコギカエデは我が国において北海道から九州まで分布するが、暖地では稀となる。栽植すると場所を選ばず生育が良く、中国では紅葉を鑑賞するため好んで栽植され、葉を染料や茶として利用するという。「カラコギ」から「唐」の字を連想するのは間違いで、歴とした日本のカエデである。名前について有力11長野(教育)キャンパス信大NOW No.73 2012.1.31 掲載なのは「鹿の子木(かのこぎ)」が訛ったとする説で、幹が太くなると樹皮が所々剥げ、鹿の子まだらの模様になることに由来するとされる。教育学部のカラコギカエデは、泉会館前の中庭に1本だけひっそりと立っている。他の木々に紛れてあまり目立たないが、カラコギカエデとしては大きな木である。5月ごろ咲く花は小さく地味であるが、秋の紅葉シーズンには葉と果実が華やかに色づく。葉はくすんだ赤であるが、和鋏形の果実のほうは、はっと魅入ってしまうほど鮮やかな紅色を呈する。果実の紅は長続きせずに乾いて褪色しまうため要注意である。植物も人も、美しい時間ははかなく過ぎゆくということだろうか。ほんのりと紅が差し始めたカラコギカエデの果実。鈴なりになるのも特徴の一つで、まるで花が咲いているかのように見える。カラコギカエデ(Acer ginnala Maxim.)樹高8.5m、幹の胸高周囲57cm。附属教育実践総合センター附属教育実践総合センター図書館図書館福利厚生施設(泉会館)福利厚生施設(泉会館)わばさみ正 門

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