理工系学部研究紹介2016|信州大学
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環境機能⼯学科⼯学部素材Material研究から広がる未来卒業後の未来像水溶液を利用した成膜装置(左)と作製した酸化亜鉛透明導電膜(右)。膜構造はロッドから膜まで簡単に制御でき、肉眼でも変化がわかる研究室での風景。テーマに関わらず、学生間でも積極的に議論・相談をしながら研究を進めている我⽥研究室我田元助教2011年3月東京工業大学総合理工学研究科物質電子化学専攻を卒業。その後、学振特別研究員PDとしてコンスタンツ大学(ドイツ)で勤務。2012年4月より現職。地球環境にやさしい「⽔」を活⽤した最先端ものづくりへの挑戦我田研究室では手嶋研究室とともに、次世代エネルギー・環境材料創成に取り組んでいます。特に我田研究室では、水溶液プロセスによる無機材料創成に力を入れています。水溶液プロセスとは、金属塩の水溶液から100℃以下の低温で無機材料を作るとても単純な手法です。実はこのような化学反応は、地球上の生物にとっては普通のことです。人間が作ることのできない複雑な形状の無機物質を作る生物も存在します。自然界のものづくりを学び・応用することで物質の形状や特性を制御したり、無機-有機複合材料を作るなど、さまざまな材料創成に挑戦しています。水溶液プロセスでは、高温や高真空などの特殊な環境を必要としません。そのため、不純物として水酸基や有機物を取り込みやすいという欠点があります。一方、さまざまな複合材料を作製できるという可能を意味しています。この特徴を生かして、透明導電膜などの電子材料や光触媒・吸着材料などの環境浄化材料など、多岐に渡る機能性材料を作製し、地球環境にやさしいものづくりプロセスを確立します!我田研究室では、環境・水をキーワードに最先端材料創成と環境調和プロセスを学びます。これらのキーワードは、現代のものづくりとは切り離すことができません。そのため、さまざまな分野に挑戦できる学生を育てています。理学部理学科化学コース素材Material⽵内研究室研究から広がる未来卒業後の未来像⾃然から学び、⽣物を⼿本にして、環境にやさしい化学を⽬指す。竹内あかり助教奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科後期博士課程修了後、九州大学助教、大分大学研究員などを経て、2012年から現職。専門分野は無機化学、生体材料学。骨や歯、ウニの殻やヒトデのような生物が生み出す無機固体は、それぞれの部位に適した強度、多孔質のような様々な形態など、ユニークな物性をもっています。これらは生体内や水中といった穏やかな条件で合成されているのですから、本当に不思議なことです。竹内研究室では、これ手本とした水溶液プロセスを用いたり、生物由来の無機物を原料としてセラミックスを調製し、環境浄化材料や人工骨補填剤としての機能を評価しています。例えば、ヒトデから採取した炭酸カルシウムを水溶液中で反応させるとリン酸カルシウム多孔体を調製することができます。合成されたものではなく天然由来の物質を使うからこそ新しいことが見えてくる、その可能性に心躍らせながら日々研究に取り組んでいます。簡単に進みそうな化学反応でも、すぐに実用化できそうな技術でも、なかなか思い通りにはいかないことがたくさんあります。そうした反応や現象を、もう一度化学の基礎に立ち返って研究してみると、そこには予想を超える新たな発見があり、どんどん可能性が広がっていきます。研究室では、化学の知識だけではなく、時には環境科学や医学、生物の知識が必要になるので、自分の専門分野以外でも躊躇することなく自由に学ぶことを学生たちに勧めています。この経験を通して、卒業後は、どんな問題に対しても自由に発想し、柔軟に対応できる人材として社会で活躍できると期待しています。実験室で合成や分析を繰り返す毎日ですが、年に数回は生物由来の無機物を探しにでかけています。水溶液プロセスで調製したリン酸カルシウム多孔体。これは10μm程度の連続した気孔をもっています。この多孔質構造を活かした環境浄化材料や人工骨補填剤としての性質を基礎的に調べています。34

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