理工系学部研究紹介2016|信州大学
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理学部理学科化学コース素材Material太⽥研究室研究から広がる未来卒業後の未来像酸化還元反応によって動く分⼦サイズのピンセット太田哲准教授信州大学大学院理学研究科修士課程、総合研究大学院大学数物科学研究科博士課程修了後、信州大学理学部助手、助教を経て、2008年から現職。専門分野は有機化学、有機機能化学。酸化還元駆動型分子ピンセットの原理図(上)と実際に合成された化合物の分子モデル(下)思いついたアイディアをすぐにフラスコの中で試せるのが化学の強みだ。日々の実験の積み重ねから新しい化合物がうまれる「分子サイズのピンセットで分子やイオンをつかむ」太田研究室ではこのような研究が行われています。独自に開発された『酸化還元駆動型分子ピンセット』は、右図に示すように酸化還元反応に応答して構造が変化する「駆動部位」と、対象物質を捕らえる「分子認識部位」から構成され、分子認識部位の間隔が変わることによって対象物質をつかんだり放したりすることができます。その動きは実在のピンセットに似ています。太田研究室ではこの分子を使って、特定の金属イオンや分子をつかんだり放したりすることに成功しました。機械のような動きや機能を示す分子を作ることは非常に挑戦しがいのあるテーマです。太田研究室では、さまざまな動きを示す有機分子の開発を進めています。分子ピンセットはその一つです。現時点では基礎研究の段階のため捕捉対象の物質は簡単な分子やイオンに限られていますが、今後は適切な分子設計を行うことによって、希少有用物質の回収や有害物質の除去といった応用への展開が期待されます。社会に出てから直面する様々な課題に柔軟に対応できる力を身につけるため、研究室では化学の基礎原理に立ち返ってよく考えて研究を行うよう指導しています。研究室を出た学生のほとんどが化学系企業の研究職に就いています。化学は様々な分野との接点が多いため業種は多様です。高齢化、獣害の増加などの様々な問題を抱える中山間地域において、トウガラシ在来品種の活用、新品種の導入などを進めることにより、同様地域におけるこれら問題を解決し、農業および食品産業の活性化を図ることが出来る。また、様々な有用植物資源の探索、分類等をおこなうことは、地域資源の利活用につながり、これら植物資源の地域内での利用・保全を進めることができれば、生物多様性の保全に貢献できるとともに、これら植物に関する伝統的知識の伝承や保全が促進されます。植物の遺伝学育種学分野の研究、学習が中心になりますが、それらを実施するためには、それらの栽培、病害虫防除、さらには加工流通から文化的背景に至るまでの分野に関しての検討が必要となることから、幅広い視野を持った人材の育成に繋がります。また、卒業後は、公務員、食品会社、種苗会社、農業関連企業で活躍できる人材になります。松島憲一准教授農林水産省国際部係長、九州農試研究員、農村振興局専門官等を経て、2002年より信州大学農学部。トウガラシの遺伝解析、品種開発、在来品種の保全等の他、国内外の有用植物資源、遺伝資源の探索も実施トウガラシ等の新品種開発および在来品種の復活等で、地域の農業と⾷品産業を活性化左;新品種開発のための胚培養技術を用いた種間雑種作出。右;産地の地域特性や利用法に併せた新品種の育成海外での有用植物資源調査事例。ブータン王国東部のタシガン県ビカールゴンパ村で食用利用されている野生植物(2006年4月実施)松島研究室研究から広がる未来卒業後の未来像素材Material農学部⼤学院機能性⾷料開発学専攻トウガラシなどの機能性を有する園芸作物、香辛料作物の新品種開発を目的として、1)それら有用形質のDNAレベルの遺伝解析、2)有用形質に着目した選抜のための分子マーカーの開発、3)胚培養等技術を用いた種間雑種作などを実施すると共に、長野県はじめとした国内はもとより、ブータン王国など海外において、有用植物資源および遺伝資源の探査、収集、保全に関する研究からそれらの民族植物学的な研究までを実施しています。さらに、これらのうちトウガラシ遺伝資源についてはDNAを用いた系統分類も実施しています。31

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