理工系学部研究紹介2016|信州大学
25/44

伊原正喜助教日本学術振興会特別研究員、理化学研究所、東京大学を経て2009年10月より信州大学農学部。蛋白質や酵素を自由自在に改造して、光合成生物の物質生産能力を高める技術開発に興味がある。伊原研究室では、光合成の力を借りて様々な有用物質を生産する技術の開発を行っています。光合成は、太陽のエネルギーを使って二酸化炭素と水から、酸素と「でんぷん」を作り出すシステムであると、授業などで習ってきたと思います。しかし「でんぷん」のほかにも、「石油」や「水素」のようなエネルギー物質や「プラスチックやゴムの原料」などを作り出すことができます。現在は、収量が低いことや生産コストが高くなることが問題となっていますが、遺伝子や蛋白質の改良など分子レベルの研究に取り組むことで、問題を一つ一つ解決していきたいと思っています。私たちはバイオテクノロジーを駆使して、エネルギー問題などの人類が直面している問題に寄与することを目指しています。現在、化石燃料の使い過ぎによって生じた問題によって、我々の社会は様々な面で行き詰りに来ていますが、光合成微生物や植物は、太陽光と二酸化炭素と水から様々な物質を巧みに合成し、環境を汚すことなく繁栄しています。生物から多くの事を学び、さらに改良していくことが、これからの社会に求められていると思います。遺伝子や蛋白質の設計・調製、化学物質の合成・分析実験を通して多様な実験手法が身につきます。また、チームで研究を行うことが多く、仲間との議論を重ねて研究を進める力を養うことが出来ます。卒業後は化学会社、製薬会社、食品会社等で活躍出来る人材になります。光合成の⼒で次世代エネルギーを作りたい光合成生物による物質生産の未来像とそれを支える遺伝子工学・蛋白質工学無菌操作用クリーンベンチ(左)、光合成微生物の培養(中)、各種分析機器(右)伊原研究室研究から広がる未来卒業後の未来像農学⽣命科学科⽣命機能科学コース農学部理学科物理学コース研究から広がる未来卒業後の未来像⽵下研究室エネルギーEnergy加速器実験はタイムマシン:宇宙開闢に迫る竹下徹教授1982年広島大学大学院終了、理学博士、同年東京大学助手、1991年から信州大学助教授、教授素粒子物理学実験、電子陽電子衝突型実験OPALにおいて精密測定-素粒子の世代数を3と決定。陽子陽子衝突実験LHCにおいて新粒子探索-ヒッグス粒子発見LHC加速器ATLAS実験装置で測定したヒッグス粒子が4つのミュー粒子へ崩壊する事象、私たちはミュー粒子の検出を分担している宇宙開闢を解き明かす、最終兵器ILC加速器と研究都市の予想図。そこで実験を行うILD測定器の開発研究を進めている理学部世界最大の加速器LHC実験に参加して、宇宙開闢の謎解きを行っています。138億年前の宇宙の初まりを解明をする意味で加速器はタイムマシンに例えられます。超高エネルギー状態であった宇宙初期を人工的に作り出し、宇宙開闢0.1ナノ秒の時代を研究しています。LHC加速器はヒッグス粒子を発見し宇宙で質量が生まれた起源の解明に進みつつ有ります。次には銀河誕生の要因であるダークマターの発見が期待されています。さらにILC加速器計画に参画し、次世代「タイムマシン」による宇宙誕生のなぞに迫る研究に取り組んで行きます。138億年前の宇宙誕生は夢物語では無く、体や物体の究極の構成基本要素を探る素粒子研究が、今やこの世界で最も大きな対象である宇宙の謎を解き明かそうとしています。しかしまだまだ分からない事がたくさんあります。その一つ一つを解明してゆく過程は地道な英知の積み重ねです。「宇宙を理解する」という大きな夢に向かって、一歩一歩研究を進めて行く楽しさがあります。物理学の実験を対象に学生生活を送ると、多くの基礎知識とその応用を自分で使うことになります。これは社会に出て大いに役立つと考えています。そしてどんな社会活動も物理という基本が出来れば乗り越えることができます。23

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です