理工系学部研究紹介2016|信州大学
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⾃然・⽣命Nature海⽼沼研究室研究から広がる未来卒業後の未来像海老沼宏安教授日本製紙グループ本社エネルギー事業部部長代理を経て2013年4月1日より現職。研究分野は、自由に植物のゲノムを改変する植物ゲノム工学と、次世代のバイオマス産業を目指したバイオリファイナリー。ゲノム⼯学を駆使するバイオリファイナリーSDIベクターは、染色体上の狙った場所に正確に遺伝子を導入する技術である。再現性の高い遺伝子解析を可能とし世界標準技術としての改良普及を目指すCSEベクターは、植物の染色体を自由に取り除く技術である。ゲノムを改変した個体は、育種素材としての利用価値が高く早期の実用化が期待される応⽤⽣物科学系繊維学部バイオマス植物の生産性や病害虫耐性などの特徴はゲノム上の多数の遺伝子が支配しており、交配と選抜により改良がなされてきました。現在の遺伝子組換え技術では、数個の遺伝子を操作しゲノム上に無作為に追加することしかできません。当研究室では、独自に開発したSDI、CSEベクターを用いて、遺伝子の交換と染色体の除去によりゲノムの自由な改変を可能とする植物ゲノム工学技術の開発を行っています。外来の遺伝子が残留せず、育種素材としての信頼性も担保でき、世界標準の技術としての普及を目指します。石油、石炭は、大昔の植物バイオマスから変化したもので、燃料、繊維、化成品の原料となっています。これらの製品は、バイオマスからも作ることができ、バイオ燃料、バイオファイバー、グリーンケミカルと呼ばれています。再生可能なバイオマスの育成から利活用まで、世界中で技術開発が進められています。企業では、バイオマス育成のための組換え技術の開発から、バイオ燃料の石炭火力での燃焼試験まで幅広く技術開発を担当してきました。ファイバーを主軸としたバイオリファイナリーの将来予測と、バイオマス改良の基盤となる植物ゲノム工学技術の研究に取り組みます。企業の研究現場での経験を活かし、ニーズに合った研究開発への取組み方の指導と、次世代のバイオマス産業の調査分析と将来予測を通じて学生にマッチする分野の探し方をアドバイスしていきます。機械システム⼯学科⼯学部⾃然・⽣命Nature吉野研究室毎年数台の計算機を作成し、負荷が高い計算にも対応している。学生主導で、部品選定からOSのインストールまで行うサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cm計算結果の例。多孔質内の浸透現象の解析(左上図)、スロート部を通過する赤血球の変形の様子(左下図)、脳動脈瘤モデルの血流解析(右図)サイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦7.8cm研究から広がる未来卒業後の未来像吉野正人教授京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了。2000年信州大学工学部助手に着任。2012年より現職。格子ボルツマン法を中心とした計算熱流体力学、移動現象論の教育・研究に従事。ミクロな世界の流れを『コンピュータシミュレーション』によって解明!吉野研究室では、流体や熱・物質の流れをコンピュータシミュレーションによって解明する研究に取り組んでいます。近年、計算機のめざましい発達のおかげで、これまで調べることが難しかったミクロな世界の流れを精度よく解析することができるようになってきました。特に、『格子ボルツマン法』というパワフルな計算手法を用いて、固体壁面上の微小液滴の挙動や小さな空隙をもつ物体内の熱流動現象など、主に『マイクロフルイディクス』(微小スケールの流体力学)の研究を行っています。さらに最近では、本学医学部と共同して血流などの生体流れの研究も行っています。吉野研究室では、シミュレーションに用いるソフトウエアを学生が自作で構築しています。一方企業では、時間的な制約から市販の汎用コード(既製品)を使うのが一般的ですが、特にマイクロフルイディクスなどの分野においては、実現象を正確に模擬していないといった問題点がよく聞かれます。そのため将来的には、得られた研究成果を集大成し、企業の方々にも満足のいく汎用ソフトウエアを開発・製作することを目標としています。自動車関連産業への就職が多く、家電メーカや重工、精密機器を扱う企業などにも卒業生を輩出。自分の専門分野にとどまらず、新しい領域の課題解決に意欲的な研究者・技術者として様々な分野で活躍しています。18

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