環境報告書2015|信州大学
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を持つ保健活動となっていくことを期待しています。  そうした動きの中から生まれてきたのが、「実践力ある在宅療養支援リーダー育成事業」です。超高齢化社会の中で在宅ケアのニーズの高まりに応えられるよう、在宅療養を支え、促進するリーダーとなる看護師を育成するものですが、難病・がん・重症児など、これまで不足していた分野における専門的な知識を学ぶことが特徴です。医学部附属病院看護部と保健学科全体とがコラボレーションして教育プログラムを提供し、各部署の専門性を活かした質の高い教育が期待されています。本年6月に第1期生の開講式が行われ、来年12月に修了となりますが、仕事を有する受講生に配慮して、e-learningやweb会議システムを用いて自宅や職場にいながらでも受講できる体制を整えたこともあり、多くの行政機関や医療機関から注目されている事業です。保健学科ではセンター設立後、各専門職者が一体となって保健活動を促進し、地域貢献できる高度な人材を育成するというミッションがより明確化してきています。さらに地域の関係諸団体と密接な連携を構築していくことで、最終的に地域の健康増進に役立つことを目指しています。長野県神城断層地震活断層の調査と文化財指定への取り組み学術研究院(総合人間科学系)教授 大塚 勉[全学教育機構 地質学] 2014年11月22日、午後10時8分頃、長野県白馬村を震源とする「長野県神城断層地震」(長野県による呼称)が発生した。震源の深さ5km、マグニチュード6.7、最大震度6弱。長野市、白馬村、小谷村など、住宅の被害は2000件以上におよび、白馬村では全壊家屋も多く、死者が1人も出なかったことは奇跡だと言われている。 信州大学の研究グループは、地震発生直後から地質、建築、農村集落など様々な方面からの調査活動を行い、3月7日には白馬村での報告会も開催した。大塚勉教授は、この報告会で地表に現れた地震断層を文化財として保存・活用することを提案。マイナスをプラスに変える発想は、参加者に新しい視点を提供することとなった。「地元で地質をやっている者の責任」として 活断層を専門とする大塚教授にとって、県内で発生した地震のニュース速報は、“出動命令”のように聞こえたのかもしれない。「地元で地質をやっている者には責任があると思っています。私がやるべきことは何かと言えば、まずは記録することです」と教授。 糸魚川―静岡構造線活断層系、通称「糸静線」が動いたのか、地表に断層が現れていないだろうか、果たしてどんな被害があるのか…。断層が地表に現れたなら、数日のうちに復旧工事でならされるので、その前にできる限りの記録を取っておかなくてはならない。   11月23日に日付が変わった頃、教授は1人で車に乗り込み、白馬村へ向かった。午前4時頃、白馬村の北の方まで走ってきた時、突然道路に大きな段差が現れて前へ進めなくなってしまった。そこはまさに糸静線の神城断層の真上、やはり糸静線が動いていたのだ。 教授は「雪が降る前に」と、時には協同研究者や学生を伴いながら足繁く白馬村へ通い、北から南へと地表踏査を続けていった。基本的には、神城断層の両側から東西方向の圧縮の力が働いた逆断層で、左横ずれ運動も伴っていた。山が崩れて地層がむき出しになっていたり、道路が割れて段差が出ていたり、また水田には緩やかなたわみ(撓曲)が出ているところなど、断層の象徴的な変位地形や露頭があちこちに現れ、結局8㎞以上に渡って断層を発見することができた。これまで数多くの断層を見てきた教授だが、発生したばかりで、これほど長距離に渡って出現している露頭は見たことがない。日本を縦断する糸静線の存在を実感させるもので、この一部を保存することは、重要な意義があることを確信したという。大塚 勉1955年 愛知県生まれ1979年 信州大学理学部卒業1987年 大阪市立大学大学院理学研究科     博士課程修了1989年 信州大学教養部講師1991年 同助教授1995年 理学部助教授2008年 全学教育機構教授地表に現れた神城断層による撓曲(地震発生翌日)図1 断層変位地形確認地点50

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