環境報告書2015|信州大学
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■参加学生たちの感想から■最も興味深かったのは、デポジット制度である。デポジット制度とは、製品価格に一定金額の「預り金」を上乗せして販売し、製品や容器が使用後に返却された時に預り金を返し、製品や容器の回収を促進する制度のことである。デパートでデポジットを利用する多くの人々は大きな袋に大量のびんを持ちこんでいた。一定の年齢層に定着している制度ではなく、老若男女、多くの人々に定着しているようだった。ドイツやオーストリアはごみの分別が細かく設定されていたが、ポイ捨てが多いことに疑問を感じた。駅のホームや道路、さらには芝生の上にも紙屑やたばこの吸い殻が大量に落ちていた。環境を意識した制度が導入されているものの、すべての環境に配慮して生活しているわけではないのかと感じた。(2年 都丸裕紀)■RCEグラーツでは、定期的に子どもたちのコースを開講していた。子どもの頃から環境に対する考え方を体験型の活動などで自然に身に着けることは、将来その子達が持続可能な社会を担っていくことに確実につながるだろうと感じた。私たちからの質問、「日本の政治家は環境問題に対して表面上は積極的だが、実際には利益を優先する姿勢が見られる。ここでは政治家の環境に対する考え方は、どんなものか?」に対し、設立者ツィマーマンさんは「残念ながら状況は日本とあまり変わらない。しかし、環境問題に配慮する政治家が一人、またひとりと確実に増えている。政治家は私たちが選ぶのだから、一人ひとりの意識が変わっていくことで、政治は変わっていく」というような回答をされていた。私は、この回答を聞いて、ESD(持続可能な発展のための教育)の重要性に改めて気づいた。(2年 山本晴香)■グラーツ大学でRCEのスタッフの方々との話し合いの中で、キーワードとして度々登場したのが、「sustainability―持続可能性」である。今を生きる私たちは、現状にあまんじることなく、未来を見据えて行動を起こすという必要がある。グラーツでは、大学がRCEの拠点として、市民を巻き込んだ広い範囲の活動を行っているということであった。大人だけではなく、小学生も活動に参加しているということには驚いた。この点で、グラーツでは、環境問題に取り組む際には、しっかりとした協力態勢が整っているのだと感じた。研修を通して、市民一人ひとりの環境意識が、ドイツやオーストリアと日本では差があると感じた。日本では常日頃から環境問題を身近に感じている人は少ない。それは多くの市民を巻き込んだ活動が少ないからである。まず、環境について知ってもらう機会が必要である。(1年 長島冴恵)■ミュンヘン市内のデパートでは、大量の飲み物の容器をデポジット回収マシーンに入れる人を何度も見かけ、非常に驚いた。私は、かさばる容器を再度お店に持っていくのは大変だろうから、利用する人はそれほど多くはないだろうと思っていたのだ。調べてみると「ドイツでは生産・消費が200㎞圏内であれば、リターナブルの方が環境負荷的に有利とされており、中小飲料メーカーの多くは実際に200㎞圏内で消費されているのに対し、外国産は輸送距離が長く、リターナブルには適していない」*と考えられているという。また飲まれるビールやミネラルウォーターの多くは地元産で、ほとんどがリターナブル容器で供給されているという。なぜ、ドイツにはデポジットが浸透し、日本には普及しないのか不思議に思ったが、当然かもしれない。日本は、日本の慣習や土地にあったことをするために、私たち一人ひとりが環境問題と向き合う重要性を感じた。(1年 依田紗矢香)*「STEEL CAN AGE」Vol.13 梅沢由香里号ウィーン経済大学にてRCEグラーツで話し合いRCEグラーツのメンバーとミュンヘン市内のデポジット36

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