工学部研究紹介2016|信州大学
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研究から広がる未来卒業後の未来像⼯学基礎教育部⾨河邊研究室非加法的測度に関する最近出版された論文。数学研究の競争相手は世界中の研究者。当然、論文は英語で執筆されるサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cm論文作成時の研究ノート。一つの論文を完成するには、論文ページ数の数百倍の研究ノートが必要となるサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦7.8cmこの世の中には2種類の俗に言う「いい加減さ」があります。一つは「桜の花が綺麗」だとか、「あと数分で駅に着く」などの言葉や行動がもつ「曖昧さ」、もう一つはサイコロ投げや、株価の変動に見られる偶然性に伴う「不確実さ」です。「曖昧さの数理」と「不確実さの数理」は、これらの言葉、行動、偶然性に潜む「いい加減さ」を、数理科学的に測定するにはどうしたらよいかを研究する分野です。河邊研究室では、非加法的測度や、ベクトル測度を用いて、「いい加減さ」を測るための数学的基礎理論の確立を目指して日々研究しています。非加法的測度論は、不完全な情報のもとでの人間の行動を数理的に解明するための期待効用理論や、株価や為替の変動の解明を目指す金融工学の分野で盛んに応用されています。また、ベクトル測度論は、自然現象や社会活動を無限自由度をもつシステムとして解析する際に必要不可欠な数学的道具の一つです。河邊研究室の学生たちは、教員と一緒に、新理論の開発を目指し、日々研究を続けています。情報関連企業、金融、運輸、公務員、数学の教員など、就職先は多岐にわたります。特に、各自の専門知識に加え、数学の研究を通じて培った論理的思考方法を身につけた学生が企業に好評です。河邊淳教授東京工業大学大学院理学研究科博士後期課程を修了後、信州大学にて、講師、助教授を経て,2003年より現職。研究分野は、非加法的測度論(ファジイ測度論)やベクトル測度論、非線形積分論(ショケ積分論)など。⾃然現象や⼈間の⾏動に潜む『曖昧さ』や『不確実さ』を測る研究から広がる未来卒業後の未来像⼯学基礎教育部⾨研究室の日常風景。一人ひとりが本や論文の内容を勉強し、セミナーの準備をするサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cmセミナーの様子。勉強した内容をセミナーで発表する。指導教員からいろいろなことを学ぶサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦7.8cm⼤野研究室量子とは物質の最小単位のことです。量子の例として電子や光子などが挙げられます。量子の世界はものすごく小さな世界なので、われわれが直感的に考える物理現象とは異なる現象が多く現れます。量子情報理論では、量子の世界に起こる不思議な現象を利用した、今よりずっと性能の良いコンピュータや、盗聴不可能な通信などが研究されています。量子情報理論を研究するためには、数学の理論である作用素論を学ぶことが必要不可欠です。同研究室では実験機材などは使わず、数学の理論を日夜研究しています。量子情報理論で研究されているテーマの一つに量子テレポーテーションがあります。二つの量子の片方の量子になにか作用を与えると、もう片方の量子に影響が表れるとき、二つの量子には量子もつれがあるといいます。この量子もつれを利用すれば、盗聴不可能な通信である量子テレポーテーションを行うことが可能です。量子テレポーテーションはすでに実験が成功しており、今後のさらなる発展が期待されています。同研究室の卒業生の進路は様々です。機械・電機関連会社から公務員まで幅広い業種に就職しています。同研究室では、論理的な思考力や問題解決能力を伸ばすことを目標にしており、どのような分野でも活躍できる人材を育てています。大野博道准教授東北大学大学院情報科学研究科にて学位(情報科学)を取得。日本学術振興会特別研究員を経て、2009年から現職。専門は作用素論・作用素環論、量子情報理論。作⽤素論と量⼦情報理論量⼦テレポーテーションの数理的な解析67

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