工学部研究紹介2016|信州大学
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物質⼯学科微生物培養はかかせない大切な作業(左)タンパク質の同定を行う電気泳動の準備(右)チームワークも大切微生物の動きに合わせてセルロースも網目構造になるセルロースを生産する微生物。黒点がある所がセルロース繊維⽔野研究室研究から広がる未来卒業後の未来像セルロースを作る生物は、植物だけではありません。微生物も作ることができるのです。水野研究室では、微生物に存在するセルロース合成タンパク質(=紡糸装置)に着目し、その機能と性質について研究をしています。この紡糸装置は細胞膜の内側から外側にまたがる様に存在し、セルロースを伸ばしていく部分と、何本かのセルロースを束ねて細胞の外に排出する部分からできています。現在までに、この装置の数と配置の仕方が形状に大きく影響することが分かっています。微生物セルロースは、ナノファイバーや生体適合材料としての利用が期待されています。目には見えない小さな紡糸装置ですが、例えば人工細胞膜上に自在に配置することが可能になれば、多様な太さや長さをもったセルロースナノファイバーを調製することが可能になるかもしれません。このように、微生物の中には、数十億年の進化に裏打ちされた究極のモノ作りのシステムがつまっています。ヒントを求めて目を向けると、まだまだハッとするようなシステムを見つけられるかもしれません。大学での研究分野と社会で活躍する分野とは必ずしも一緒ではありません。化学系・電気機器系・食品系、公務員など様々な分野で、元気に活躍しています。水野正浩助教東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程を終了後、日本学術振興会特別研究員を経て、2006年より現職。専門は、タンパク質のX線結晶構造解析。特に酵素の機能解析を中心に研究を進めている。微⽣物が作り出す“セルロース”〜驚異の紡⽷装置の解明を⽬指して〜1.0 μm1.0 μm物質⼯学科頑丈なシリカカプセルにコバルトナノ粒子を閉じ込める:シリカの表面(右下の電子顕微鏡像)に吸着・触媒活性成分を塗ると、磁石で回収可能な吸着剤・触媒になる有害物質分解触媒の活性試験のようす:固体触媒の研究では,触媒を独自に合成するだけでなく,活性試験の装置を独自に組み立て,活性試験によって触媒性能を明らかにします。岡⽥研究室研究から広がる未来卒業後の未来像身近で当たり前のようにみられる現象は実は複雑で未だわからないことがたくさんあります。人間が再現するのも簡単ではありません。しかしこの中に画期的な吸着剤や触媒を開発するヒントは眠っています。現在、幸いにも多くの先端的分析機器を利用できる環境にあります。この恵まれた環境を活かしつつ、分野を超えてあらゆる現象に興味を持って、誰も思いつかない発想で物質を「組み合わせ」れば、これまでにない性能をもつ吸着剤・触媒に出会えることができるでしょう。化学に限らず、電気、機械分野においても新しい素材づくりには化学の知識、そして素材の性質を調べるための技術(特に大型機器で分析する技術)が必要です。また固体の触媒試験では,ガス配管の建設メンテも必要なノウハウです。これらをバランス良く学びながら、主体的に研究に取り組む方法を学び、企業等で研究開発の中核を担う人材を目指すことができます。吸着剤や触媒は,わたしたちの生活に役立つ物質として知られています。例えば,吸着剤は有害な有機化合物を効率良く除去することができますし,酸化チタンなどの光触媒は有害有機化合物を太陽光で効率良く分解してくれます。固体の触媒にはこの他にも天然ガスから水素を効率良く製造したり,身の回りの化成品を生産するなど多方面で活躍している物質です。当研究室では,このような吸着剤や触媒の性能を格段に向上させ,省エネ・省資源化に貢献する研究をすすめています。岡田友彦准教授早稲田大学を卒業(1999.3)後同博士後期課程を修了。早稲田大学助手を経て2007年より助教。2015年より現職。博士(理学)。研究分野は材料化学、表面化学、触媒化学。省エネ・省資源に役⽴つ吸着剤・固体触媒45

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