工学部研究紹介2016|信州大学
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Pd (111)巨大リポソームの形成実験の様子。巨大リポソームは細胞と同程度の大きさを持ち、光学顕微鏡で直接観察することができる巨大リポソームに対するマイクロマニピュレーション。人工授精などと同様に極細のガラス針を通して物質を注入するなどの操作ができる物質⼯学科奥村研究室研究から広がる未来卒業後の未来像科学の進歩により、細胞が化学的原理に基づいて働くシステムであることが明らかになってきました。これを受けて、同様の化学的原理を工学的に使い、細胞と似た機能を持つマイクロ化学システムを人の手でつくりだそうとする考えが生まれました。奥村研究室では、細胞膜にあたる構造である脂質2分子膜小胞(リポソーム)を中心に研究をおこなっています。この構造はシステム外界と内界との境界・インターフェースであるとともに、タンパク質に相当する機能分子群を保持する役割を持つなど、システム構築の基盤となる重要な部分です。高度な細胞類似マイクロ化学システムをつくりだせるようになれば、擬似細胞をマイクロマシンとして利用した新しい治療法、あるいは毒性を持たない「農薬」など、生命現象と関わりを持つ多くの分野における技術革新につながるものと期待されます。宇宙開発などと同様に、そこに到達するには長期にわたる研究と開発が必要となるでしょうが、世界中で挑戦が始まっています。化学に関連した様々な分野で活躍することになります。論理的に考察する力、物事を的確に伝える力など共通して必要となる能力を研究活動を通して伸ばすことを目標にしています。奥村幸久教授京都大学助手、信州大学助教授を経て2012年より現職。研究分野は有機化学を背景とした分子集合体化学、特に脂質2分子膜小胞(リポソーム)の化学。細胞類似マイクロ化学システムをめざして組成分析の結果赤い部分には主にCuが析出しており、緑の部分にはCuとInが共析している写真サイズ高さ4.35cm×幅7.5cm配置位置横11.4cm、縦2.85cm電位パルス電解法により作成したCu/In積層薄膜断面の走査型電子顕微鏡写真写真サイズ高さ4.35cm×幅7.5cm配置位置横11.4cm、縦8.15cm物質⼯学科篠原研究室研究から広がる未来卒業後の未来像篠原研究室では、めっき法を活用して付加価値の高い合金薄膜を低コストで作製することを目指して研究を進めています。合金化することで単一金属では認められない有用な特性(低融点、耐腐食性、高硬度など)を持つ金属薄膜を作ることが出来ます。また、合金めっきでは通常多くの添加剤を使って2種以上の金属の析出電位を近づけることにより合金として析出させますが、同研究室では作製しためっき皮膜の特性を劣化させる可能性を持つ有機添加剤を使わずに合金めっき皮膜を作製する方法として、電位パルス電解法を使った合金めっき技術の開発などを行っています。小さな部品を製造する場合には、材料のかたまりを切ったり、削ったりして作ると考えがちですが、切る・削る技術で1mmの1/100以下の部品を大量に作成するのはとても困難です。そこで、篠原研究室では発想を変えて、めっき技術を応用して原子を積み上げることにより、ごく微細な部品を作りたいと考えています。現在は、その材料となる好ましい特性を持った様々な合金めっきの基礎的な研究を行っています。めっき技術は、以前は装飾または防錆分野での活用が主でしたが、現在は微細電子部品等の製造分野でも活用されており、卒業生は電子部品や精密機械メーカー等に就職しています。篠原直行准教授信州大学大学院工学系研究科を修了後、めっき被膜の層構造に及ぼす有機物の影響等について研究を続けてきている。現在は合金めっき技術の応用研究を行っている。めっき法を活⽤して低コストで微細な部品を⼤量に作製する42

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