工学部研究紹介2016|信州大学
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種々の溶媒や試薬、ガラス器具を使ってドラフト内で反応や蒸留などの実験操作を行い、有機化合物を合成する有機分子が分子触媒(黄色)と配位結合をし、活性化される核磁気共鳴装置を用いて、有機化合物の3次元構造を決定する物質⼯学科菅研究室研究から広がる未来卒業後の未来像菅研究室では、薬理活性な光学活性ヘテロ環化合物の合成に関する研究を行っています。有機分子には、不斉中心があり、鏡像関係にある右手系と左手系の化合物が存在します。このような分子は、医薬品にも用いられていますが、右手系が薬であるのに対して、左手系は毒として作用することが多々あります。有機合成の分野では、このような分子をいかに効率的に作り分けるかが重要な研究課題です。同研究室では、医薬品に多く含まれる酸素や窒素などを含む環状化合物(ヘテロ環)をターゲットとして、一方を作り分ける分子触媒や高選択的反応の開発を行っています。有機合成化学は、医薬品や農薬の合成のみならず、新しい有機材料の合成にも広く用いられており、化学関連産業において重要な役割を担っています。合成反応においては、目的とする化合物だけでなく、複数の生成物が生成する反応があり、ほしいものだけを効率的かつ選択的に得る方法の開発が重要です。これを可能にする新規分子触媒や手法の開発は、化学関連産業の発展に大きく寄与するものと考えられます。化学、製薬および農薬メーカーへ多くの卒業生を輩出しています。有機化学は、分子レベルでものを扱う学問であり、その習得により、低分子や高分子等を問わず幅広い分野で活躍できます。菅博幸教授大阪大学大学院理学研究科助手、ミシガン大学博士研究員、信州大学工学部助手、助教授を経て現職。主な研究分野は、有機合成化学。特に有機合成における新規手法、新規分子触媒の開発。有機合成を⽤いて、薬理活性ヘテロ環を作る。新規な分⼦触媒や⾼選択的反応の開発昭和14年に日本陸軍の依頼により分離された木材腐朽菌、地球上の木質系の有機物分解に必須の地球の掃除屋さん日本に一台しかない高温高圧の連続式水熱反応装置。水だけで有機物の分解を行い、その後の酵素反応を手助けする物質⼯学科天野研究室研究から広がる未来卒業後の未来像天野研究室では、生物化学を基礎として、生物が持つ機能を活かしたものつくりを目指しています。生物には精密な設計図であるDNAとこの情報に基づいて作られるタンパク質があります。この機能性のタンパク質の主体は酵素であり、生体内での複雑な化学反応のすべてにこの生体触媒が関与しています。しかも、生体内の反応はすべて常温常圧で行われているにもかかわらず、非常に早い反応です。この巧みな技を工学的なもの作りに応用すれば、環境に優しいグリーンケミストリーが実現できます。そんな夢の実現にむけて学生と教職員が一丸となって日々頑張っています。天野研究室では、地球上で最も豊富に存在する有機物であるセルロースを研究対象にしています。セルロースなどの天然高分子は太陽の恵みを受けて固定されたエネルギーの源です。これを利用すれば、エネルギーはもとより、有機材料、または食品素材まで作ることが可能です。このように地球に優しい材料開発を通して、地域、日本あるいは世界の持続的な発展を支えていきます。化学は地味ですが、今日の近代社会の機能性の材料を通して社会に貢献しています。今後はさらに環境に配慮した技術開発が必要となりますので、卒業生の活躍の場は無限です。天野良彦教授信州大学大学院工学系研究科修了、博士(工学)1995年より信州大学工学部助手・助教授を経て2005年に教授。2010年から地域共同研究センター長(兼任)専門:生物工学(特に酵素化学)生体触媒の基礎と応用について研究。⽣物の機能を活かしたものつくりを!-遺伝⼦・タンパク質から化学プラントまで-40

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