工学部研究紹介2016|信州大学
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沖縄の琉球石灰岩地帯の地下水観測用井戸の採水風景。周りの畑(サトウキビや電照菊)では灌漑用水として地下水が利用されている■宮城の地下水リスク評価のため、■地下水資源量を調査するため、井戸水を採水している河川の流量も測定する中屋研究室研究から広がる未来卒業後の未来像⼟⽊⼯学科中屋研究室では、湧水や井戸水などの地下水を採水し、中に含まれているトレ-サ-と呼ばれる化学物質を使って水の動きを追跡し、可視化する研究に取り組んでいます。例えば、クロロフルオロカ-ボン類や六フッ化硫黄などの人工的に製造されたガスは大気中にあふれ出し、年代とともに増加しています。これらのガスは、わずかに地下水中に溶けていて、その濃度を測定すると地下水の年齢が分かります。年代トレ-サ-になるのです。また、水中の18Oや2Hは、地下水の流動トレ-サ-になります。地下水の年齢や動きが分かると、地下環境の様子が見えてきます。地下水中の化学トレ-サ-を測定すると、その水が、いつ、どこ(水源地)で涵養し、地下をどのような経路で流動してきたかや、要した時間(滞留時間)がわかります。地域の水源地の保全や地下水資源の持続的な利用のル-ル作りに一役買っています。バングラデッシュなど、モンス-ンアジアの水問題、地下水汚染問題を解決し、安全で安心できる水資源を確保し、未来の人たちに受け継いでいく、そんな研究を進めています。卒業生は、官公庁、建設コンサルタント、JR、その他民間企業と様々ですが、何らかの形で水や野外調査に係わる仕事をしている人は多いです。土木関係の紛争の弁護士を目指して、卒論では野外調査研究をした弁護士の卵もいました。中屋眞司教授民間企業を経て、1999年より信州大学工学部助教授、2010年より現職。研究分野は、水文学で、最近、地下水年代測定システムを開発し、モンスーンアジアの地下水資源の保全やヒ素等の大規模地下水汚染を調査。地下⽔の年齢を測り、⾒えない流れを可視化-化学トレーサーのパワーを利⽤-卒業研究で人々の意識を調べた結果、『風景としては雑然としすぎて良くないが、橋そのものは結構良い』との評価が得られた大阪の港大橋橋の橋脚として使われる鉄の柱が地震で揺れた際の、コンピューターシミュレーション結果。最初は真っ直ぐだった柱が、最後は完全に折れ曲がっている清⽔研究室研究から広がる未来卒業後の未来像⼟⽊⼯学科「橋」とは・・・川や海を渡るための交通路?それなら、神社やお寺の入口にある太鼓橋は何のため?清水研究室では、橋を、その力学的な強度の面・デザインや橋に対する印象を多角的に研究しています。力学面では、主として、橋が外力(地震力など)を受けた時、どのように変形し、どのように壊れるか、といった研究が主体です。デザインや印象面では、橋の色や形がどのような印象を与えるか、などの内容が主体ですが、江戸の街の橋が当時の人々にどのように思われていたか、といった研究もしています。力学面の研究は、一口で言えば、橋の壊れ方の研究です。橋の「壊れ方」と「壊れるときの力のかかり具合」がわかれば、橋のどこをどのように補強すれば良いかがわかるからです。と言っても、実際に本物の橋を壊すわけには行きません。ほとんどがコンピュータによるシミュレーションです(たま~に実験もありますが)。デザイン・印象面の研究は内容が色々ありますが、要するに、(良い意味で)印象に残る橋を設計するにはどうしたらよいか、ということです。研究方法も、色々の橋の風景を見たり、江戸時代の地図を見比べたりと、様々です。清水研究室の卒業生の進路は、官公庁・鉄道会社・建設会社など、多岐にわたっています。もちろん橋の会社に就職する学生も大勢います。橋の会社に入った卒業生の中には、話題のあの恐竜の橋~東京ゲートブリッジに携わった方もいます。清水茂教授長野県上田市生。信州大学・名古屋大学大学院博士課程を出て信州大学勤務。専門は橋梁工学。奥裾花橋梁景観検討委員会(委員長)、天龍峡大橋景観・構造検討委員会などの委員を歴任。橋の安全性は?橋のデザインは?⼈々の⼼の中で橋の位置づけは?29

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