工学部研究紹介2016|信州大学
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実験風景(a)光を用いたデバイス加工の様子、(b)薄膜作製工程の様子(c)有機太陽電池の測定、(d)作製した回路の電気特性評価の様子低温で作れる。材料の無駄を減らせるからエコ。高性能で薄くて曲がる回路も実現可能。有機デバイスは大面積で有利。LEDと違い点ではなく面で光る伊東研究室研究から広がる未来卒業後の未来像電気電⼦⼯学科薄いフィルムが太陽電池になったり極薄の光源になる!?機能性のインクをミクロの単位で塗り分けたり重ねることができたら、厚さ0.1mm程度の紙のようなプラスチックが太陽電池や電子ブック、照明になる日が来るでしょう。伊東研では有機半導体と呼ばれる不思議な色素や加熱すると金属になるナノメタルインクやナノカーボンのインクを印刷のような技術で細かく塗り分けたり積み重ねて、微細な電気配線や、センサ、発光素子、太陽電池を開発しています。その中に潜む現象の解明と改良を重ねて薄い、軽い、曲げられる次世代の太陽電池や電子製品の実現を目指しています。伊東研究室では有機半導体や極薄の酸化膜や金属のナノ材料を組み合わせた光電子デバイスの作製とプロセスの開発を行なっています。高性能化を実現するための物理現象を解明すれば大幅な性能アップが期待できます。現状の有機太陽電池や有機発光素子の効率はシリコン系太陽電池や最新のLED照明の半分程度ですが、10年前から性能は5倍に増加。今後のさらなる展開を目指し学生達は実験や研究に日々参加しています。計測器や大手家電メーカーの他、精密機器、発電及びその周辺を扱う企業にも卒業生を排出。先生は「有機エレクトロニクスはこれからの産業。日頃の研究で得た知識や経験、問題解決能力は様々な分野で活きる。いろんな仕事に挑戦するように」と日頃から指導しています。伊東栄次教授東京工業大学卒、1998年より信州大学に赴任。2004年准教授、2015年より現職。研究分野は有機半導体と酸化物や金属ナノ材料の融合による次世代センサ、太陽電池、発光デバイス、回路の要素技術の開発とエレクトロニクス応用。薄い、軽い、曲げられる電⼦製品の実現へ。未来の太陽電池や光る回路の原理を解明する触覚センサの実験に使うロボットアームとインピーダンスアナライザ(撮影場所は長野総合工業試験所内)接触前後の容量変化の逆数の差と接触物体のヤング率との関係、実線はヤング率のみを考慮したモデルの理論値伊藤秀明研究室研究から広がる未来卒業後の未来像電気電⼦⼯学科伊藤秀明研究室では、クオーツ時計に使われている音叉型水晶振動子の設計に役立つ各種パラメータ(Q値、動的容量、周波数等)の解析とその動的容量変化を用いた触覚センサの開発に取り組んでいます。この触覚センサは柔らかいネオプレンゴムからプラスチックの硬さの物体への接触前後で動的容量が変化し、複数の異なる周波数を持つセンサを組み合わせて用いるとヤング率と粘性率を同時に測定できる可能性があることを理論的に解明しました。現在は、その実現に向けて触覚センサ・システムを構築して、その測定精度や解析モデルの改良に取り組んでいます。人間の手のような触覚センサを実現するために、音叉構造が粘弾性物体に接触したときの接触状態をモデル化して解析に取り組んでいます。接触物体をフォークト体の粘弾性モデルで扱い、音叉構造の基底部への接触を弾性基礎として扱って解析した計算結果は実験結果とよく一致することから、人間の手が持つ「硬さ」「柔らかさ」以外のゴムの質感(粘性係数)までも計測できるセンサを目指しています。水晶振動子はデジタル機器の基準クロックとして使われている基幹部品ですが、多くの企業ではブラックボックスとして扱われているのが現状です。卒業生は自動車関連企業や電子部品メーカーなど幅広い業種に就職しています。伊藤秀明教授信州大学助手、助教授を経て現在信州大学教授。水晶振動子の解析と応用、シリコン製機械振動子の量子変位の解析と機械振動子での古典的振舞から量子的振舞への遷移の解明。棒理論による⾳叉型⽔晶振動⼦の各種パラメータの解析と触覚センサへの応⽤23

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