理工系研究紹介2015|信州大学
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理学部化学科素材Material太⽥研究室研究から広がる未来卒業後の未来像酸化還元反応によって動く分⼦サイズのピンセット太田哲准教授信州大学大学院理学研究科修士課程、総合研究大学院大学数物科学研究科博士課程修了後、信州大学理学部助手、助教を経て、2008年から現職。専門分野は有機化学、有機機能化学酸化還元駆動型分子ピンセットの原理図(上)と実際に合成された化合物の分子モデル(下)思いついたアイディアをすぐにフラスコの中で試せるのが化学の強みだ。日々の実験の積み重ねから新しい化合物がうまれる環境機能⼯学科⼯学部素材Material研究から広がる未来卒業後の未来像水溶液を利用した成膜装置(左)と作製した酸化亜鉛透明導電膜(右)。膜構造はロッドから膜まで簡単に制御でき、肉眼でも変化がわかる研究室での風景。テーマに関わらず、学生間でも積極的に議論・相談をしながら研究を進めている我⽥研究室我田元助教2011年3月東京工業大学総合理工学研究科物質電子化学専攻を卒業。その後、学振特別研究員PDとしてコンスタンツ大学(ドイツ)で勤務。2012年4月より現職。地球環境にやさしい「⽔」を活⽤した最先端ものづくりへの挑戦「分子サイズのピンセットで分子やイオンをつかむ」太田研究室ではこのような研究が行われています。独自に開発された『酸化還元駆動型分子ピンセット』は、右図に示すように酸化還元反応に応答して構造が変化する「駆動部位」と、対象物質を捕らえる「分子認識部位」から構成され、分子認識部位の間隔が変わることによって対象物質をつかんだり放したりすることができます。その動きは実在のピンセットに似ています。太田研究室ではこの分子を使って、特定の金属イオンや分子をつかんだり放したりすることに成功しました。機械のような動きや機能を示す分子を作ることは非常に挑戦しがいのあるテーマです。太田研究室では、さまざまな動きを示す有機分子の開発を進めています。分子ピンセットはその一つです。現時点では基礎研究の段階のため捕捉対象の物質は簡単な分子やイオンに限られていますが、今後は適切な分子設計を行うことによって、希少有用物質の回収や有害物質の除去といった応用への展開が期待されます。社会に出てから直面する様々な課題に柔軟に対応できる力を身につけるため、研究室では化学の基礎原理に立ち返ってよく考えて研究を行うよう指導しています。研究室を出た学生のほとんどが化学系企業の研究職に就いています。化学は様々な分野との接点が多いため業種は多様です。我田研究室では大石研究室・手嶋研究室とともに、次世代エネルギー・環境材料創成に取り組んでいます。特に我田研究室では、水溶液プロセスによる無機材料創成に力を入れています。水溶液プロセスとは、金属塩の水溶液から100℃以下の低温で無機材料を作るとても単純な手法です。実はこのような化学反応は、地球上の生物にとっては普通のことです。人間が作ることのできない複雑な形状の無機物質を作る生物も存在します。自然界のものづくりを学び・応用することで物質の形状や特性を制御したり、無機-有機複合材料を作るなど、さまざまな材料創成に挑戦しています。水溶液プロセスでは、高温や高真空などの特殊な環境を必要としません。そのため、不純物として水酸基や有機物を取り込みやすいという欠点があります。一方、さまざまな複合材料を作製できるという可能を意味しています。この特徴を生かして、透明導電膜などの電子材料や光触媒・吸着材料などの環境浄化材料など、多岐に渡る機能性材料を作製し、地球環境にやさしいものづくりプロセスを確立します!我田研究室では、環境・水をキーワードに最先端材料創成と環境調和プロセスを学びます。これらのキーワードは、現代のものづくりとは切り離すことができません。そのため、さまざまな分野に挑戦できる学生を育てています。28

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