理工系研究紹介2015|信州大学
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⾃然・⽣命Nature海⽼沼研究室研究から広がる未来卒業後の未来像海老沼宏安教授日本製紙グループ本社エネルギー事業部部長代理を経て2013年4月1日より現職。研究分野は、自由に植物のゲノムを改変する植物ゲノム工学と、次世代のバイオマス産業を目指したバイオリファイナリー。ゲノム⼯学を駆使するバイオリファイナリーSDIベクターは、染色体上の狙った場所に正確に遺伝子を導入する技術である。再現性の高い遺伝子解析を可能とし世界標準技術としての改良普及を目指すCSEベクターは、植物の染色体を自由に取り除く技術である。ゲノムを改変した個体は、育種素材としての利用価値が高く早期の実用化が期待される応⽤⽣物科学系繊維学部農学部⾃然・⽣命Nature応⽤⽣命科学科⾷品化学研究室片山茂助教北海道大学で博士号を取得後、カナダ・ゲルフ大学博士研究員を経て、2008年10月より信州大学農学部。食品機能性成分のニュートリゲノミクス(栄養ゲノム学)に関心がある。機能性⾷品が超⾼齢化社会を救うはつらつ⻑寿の実現に向けて修士課程久志本尚子さん国際会議での受賞(USA)右は世界的に著名な研究者Dr.シャヒディ氏食品化学を専門とする研究室であり、女子学生も多く在籍している。研究成果は国際会議で発表し、高い評価を得た研究発表に対しては優秀発表賞などを受賞している修士課程近藤葉月さん国際会議での授賞(Canada)大豆ペプチドを摂取したマウスでは、脳海馬において神経栄養因子の産生が促進されている。モリス水迷路試験では、記憶学習能の改善効果が示されており、大豆ペプチドの脳機能保護効果が明らかになっている研究から広がる未来卒業後の未来像研究室では「学生中心主義」と「世界に通用する人材育成」をモットーに研究指導されており、研究室全員が楽しく学べるよう努めているとのことです。卒業後は、食品・化粧品・製薬系の企業などに就職し、専門知識を活かして活躍しています。昨今、高齢者における認知機能の低下や認知症の発症が大きな問題となっています。また、医療費の増大や介護力の低下が深刻な問題になりつつあります。このような背景のもと、脳機能維持に貢献する機能性食品の開拓ニーズが高まっています。食品化学研究室では、老化促進モデルマウスを用いて食品成分の脳機能保護効果に関する研究を進めており、アンチエイジング(老化予防)が期待される機能性食素材の開発に向けて、企業との共同研究を行っています。研究成果は、健康栄養や医療などさまざまな分野への貢献が期待されます。食品化学研究室では、生体調節機能をもった機能性食素材の開発および分子設計に関する研究を行っています。具体的には、認知症予防効果、アンチエイジング(老化予防)、花粉症や食物アレルギー改善効果、肥満・糖尿病など生活習慣病の予防効果をもつ食素材の開発に取り組んでいます。超高齢化社会を迎えた我が国では、高齢者がいつまでも“はつらつ”と輝き活躍する社会づくりが求められており、食品化学研究室では、健康長寿社会の実現に寄与する新たな機能性食品の創出をめざして研究を行っています。バイオマス植物の生産性や病害虫耐性などの特徴はゲノム上の多数の遺伝子が支配しており、交配と選抜により改良がなされてきました。現在の遺伝子組換え技術では、数個の遺伝子を操作しゲノム上に無作為に追加することしかできません。当研究室では、独自に開発したSDI、CSEベクターを用いて、遺伝子の交換と染色体の除去によりゲノムの自由な改変を可能とする植物ゲノム工学技術の開発を行っています。外来の遺伝子が残留せず、育種素材としての信頼性も担保でき、世界標準の技術としての普及を目指します。石油、石炭は、大昔の植物バイオマスから変化したもので、燃料、繊維、化成品の原料となっています。これらの製品は、バイオマスからも作ることができ、バイオ燃料、バイオファイバー、グリーンケミカルと呼ばれています。再生可能なバイオマスの育成から利活用まで、世界中で技術開発が進められています。企業では、バイオマス育成のための組換え技術の開発から、バイオ燃料の石炭火力での燃焼試験まで幅広く技術開発を担当してきました。ファイバーを主軸としたバイオリファイナリーの将来予測と、バイオマス改良の基盤となる植物ゲノム工学技術の研究に取り組みます。企業の研究現場での経験を活かし、ニーズに合った研究開発への取組み方の指導と、次世代のバイオマス産業の調査分析と将来予測を通じて学生にマッチする分野の探し方をアドバイスしていきます。17

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