2014環境報告書|信州大学
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のか」と真剣に考え、その後、環境保全に尽くす方法を模索した。2006年には信州大学環境委員会の委員になると、ISO14001の認証取得前には膨大な書類を書き、監査があれば、朝早くから他キャンパスへ出向くなど、精力的に活動した。工学部環境機能工学科の教員が牽引し、環境委員会が一丸となっていたからこそ、すべてのキャンパスで認証取得ができたという実感がある。活動に携わりながら、情熱が人を動かし、仲間と一緒にやるからこそ成し遂げられるということを、教授は身をもって感じてきた。■なぜ、あなたたちは取り組まないのか 教授がドイツのRCEで「特徴ある活動は?」と聞くと「当たり前のことをやっているだけだ。どこでもできることなのに、なぜ、あなたたちはしないのか?」と質問を返されたことがある。持続可能な社会のための行動とは、何も特別なことではなく、“当たり前”のことなのだ。それを効果的に継続して行うようにするためにESDが必要になる。 「例えばレジ袋をもらわず、エコバッグを持つようになり、一歩踏み出した満足感はいつまで続くでしょうか?多くの人達がこれで本当に環境保全になるのか、被害にあった動物は救えるのか、と疑問を持つでしょう。一人ではなく、仲間と一緒にやっていると充実感や楽しさが生まれて継続することができ、一人でするよりも効果が上がります。それが社会的なうねりを起こし、政治を変え、全体を変えていく。ボトムアップで市民の意見が活かされていくのがドイツ方式です」 教授の専門であるドイツ文学にも、ドラマチックなことよりも、一日一日の暮らしこそが重要であることを伝えてくれる作品がある。「結局は、ライフスタイルの問題です。持続可能な社会を我々が作るんだという意識をもって生活していくことが大切だと思います」と教授。そのために学生たちにもESDで基礎をつくってほしいと願っている。■ ポルトガルのトゥジェイラにあるCRASMでの体験が印象深いものだった。この施設では生後まもない動物やけがを負っている動物たちの保護が行われていた。スタッフはそれぞれに別の職業を持っていて、それに加えて無償で施設の運営を行っていると聞いた。国からの大々的な支援がなくてもESDの拠点を設置、運営できることがわかった。しかし、彼らの活動はあまり地元に浸透していないのだという。一部の熱心な人々だけでなく、現代に生きる私たち全員が、まずは身近な環境の保全について真剣に思案していくべきだと思った。(3年 荒山 健人)■ ポルトガルカトリック大学のESD活動をされている講師の方が「我々が先頭を切って市民たちに環境教育を施さなくてはならない」と言っていた。日本では、森林や海など自然環境を守ることがどれほど大切なことかを大半の国民は認識しているのに、ポルトガルではそうでないことに驚いた。講師の方は森林の保全と再生に力をいれていて、毎年ボランティアを集め植樹する活動をしているとのこと。私は、こういった活動が何年も続き、やがてはっきりと目に見える形でその努力が報われる日が来るといいと、心から願った。(3年 石井 翔太)■ 最後のドイツでは、RCEのスタッフに活動のお話をお聞きした。ドイツでは公園や道に煙草のポイ捨てがとても多くて気になったため質問すると、「近くにごみ箱があれば、もちろん捨てますが、ベンチに座ってリラックスしている時など、どうしても皆その場で捨ててしまうのです」という答えだった。ドイツ人と日本人の考え方の違いなのかもしれない。灰皿を設置すればポイ捨ては減ると思うが、灰皿は見られなかった。今回の研修は自分の考えをあらためて見つめ直す良い機会であり、また環境活動と一括りに言ってもいろいろな形があることがわかった。(3年 奥原 萌)■ CRASMの基本概念は、保護した動物たちが自然に戻れるような状態にしていくことであり、餌を与え、怪我の状態を診ること以外はあまり接しない。完全に飼育するのでなく、過度な干渉をしないという姿勢は、非常に斬新だと感じた。ポルトガルカトリック大学では地域の中で企業や教育機関と連携して情報や企画を発信し、地域全体で活動が活発に行われるようにしている。地域から信頼のある大学が拠点となることで連携しやすく、規模は大きくはないが確実で持続した成果が出ていた。この研修で、これまで現実味を帯びていなかった環境問題が、実はかなり自分の身近な問題であると自覚するようになった。(2年 尾崎 薫)■ CRASMで印象に残ったのは、フクロウのシャンディである。シャンディは翼の骨が折れていて飛べなかった。全員、シャンディに触らせていただいた。施設の廊下は上を見ると空が見え、網が張ってあるので、シャンディは逃げ出すことはできない。私の手に乗っている間怖かったのか、ずっと羽を拡げていた。最後にはケガをしているにも関わらず必死に飛んで、自分の部屋に戻ってしまった。シャンディには申し訳なかったが、実際に触れて、早く良くなってほしいと思うのと同時に、この施設が行っていることの大切さを感じた。(2年 工藤 誌穂)モンテジュント自然生物救命センターRCEミュンヘンのスタッフと火事で植林が必要になった山の写真RCEミュンヘンのスタッフから説明を聞く参加学生たちの感想から28

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