2014環境報告書|信州大学
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カトマンズでは、大気汚染が大きな問題になっています。視界が悪く、臭いも強烈でした。こうした大気汚染の原因の一つは、ディーゼル車による排気ガスです。カトマンズの大気汚染を改善していくためには、この問題の解決が急務です。私が注目したのは、サファ(きれいな)テンプー(タクシー)という三輪乗合タクシーです。このサファテンプーの電動化の取組みを通して、環境問題を考えたいと思います。テンプーは、1990年代まで、カトマンズの大気汚染の一番の原因と言われてきました。しかし、今では、全車両が、ディーゼルエンジンから電動モーターに切り替えられており、クリーンな乗り物に変化しています。研修では、電動モーター式サファテンプーを運用しているNEVI社を訪れました。ディーゼルから電動に作り替えたきっかけを社長に伺うと「大気汚染から市民の健康を守りたかった」との回答でした。このサファテンプーのように、他の車両も、エンジンや動力源の改善を講じていく事が必要であり、それは可能だと感じました。サファテンプーは、最高速度が時速40km、8時間の充電で70kmの走行が可能で、社会経済活動の活性化に大きく寄与しています。また、作りが非常にシンプルで、運転や修理が容易であることから、様々な面で現地の人々の雇用に繋がっています。「環境問題は、生活水準の低さによっても生まれる。サファテンプーの製造や活用で、安定した雇用が生まれ、インフラ整備や子どもの教育の向上に繋がっていけば、環境問題の根本にある生活水準の改善が進むはず」と社長は力強く話しました。同社では、実際に下層カーストの方や女性を積極的に採用しており、雇用している人の家族まで含めれば、5,000人の生活を支えているとのことです。これまでは、環境問題の解決と聞くと、環境負荷低減技術のような技術的なもの・工学的なものを思い浮かべていました。しかし、今回の研修を通じて環境問題は、社会や文化と非常に密接に繋がっており、複合的な視点での解決策が必要だということが明確になりました。澤田 純平さん (工学部機械システム工学科3年)02REPORT市民の足=“サファテンプー”の電動化による環境改善 水はあらゆる生物の生命維持の根幹を担う大切な資源です。しかし、ネパールでは、水道水は飲めず、不衛生な水によって、亡くなる人も後を絶ちません。そこで私は、ネパールの水問題を考えました。カトマンズでは、水質汚染が著しく進んでいました。河川の周りには、大量のゴミが投棄されており、水は黒く濁り、異臭やガスが発生していました。川の水を利用するということ自体が難しい状況です。こうした水質汚染の主な原因は、カトマンズの人口が急増する中で下水処理機能やゴミ処理が間に合っておらず、機能不全に陥ってしまっていること、また、社会的制度が不十分なことなどがあげられます。生活排水がそのまま垂れ流されている状況は、水質汚染のみならず、病原菌を媒介するネズミや蚊の増加にも繋がっており、衛生面からも水問題の解決は急務となっています。坂本 奈々さん (工学部土木工学科3年)03REPORT人口増加に起因する水質汚染の現状サファテンプーの社会的意義13

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