2014環境報告書|信州大学
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地方自治体が、適切な啓蒙活動をしてこなかったこと」、「事業用としての地下水利用」と続きました。この結果からも、地下水の減少や保全・涵養の必要性を市民に周知していく事の重要性が浮き彫りになりました。■地下水空調システムの導入について 信州大学が研究を進めている次世代型地下水空調システムの導入に際する意識についても尋ねました。 地下水空調システムとは、地下水を汲み上げ、地上で熱交換し、冷暖房に使用する熱エネルギーを取り出すシステムのことです。年間を通し、地下水の温度変化が少ないという特徴を利用した技術であり、熱交換した地下水は、地下に戻すため、再生可能なエネルギーとして期待されています。 この地下水空調システムを「知っている」と答えた人は、約9%にとどまりました。「聞いたことはある」という人を足しても、約35%です。しかし、技術の導入に関しては、「わりと良い事だと思う」・「大変良い事だと思う」が合わせて約79%と高い数値を示しました。 新しい技術や地下水利用への不安はあると思いますが、しっかりとしたエビデンスを示しながら進めていくことが出来れば、地下水を活用する技術の導入への合意形成は進んでいくという期待が持てる結果になりました。■地下水の保全・涵養を進める方法 様々な環境問題に共通して言える事だと思いますが、自分1人が努力したところで、「何か変わるの?」という気持ちになってしまうという問題があると思います。 つまり、自分の取組みへの“効力感”が必要です。そのためには、例えばコミュニティ単位や地域レベルで、地下水の増減を視覚や数値で示していくことなどが考えられます。 また、学校教育と絡めていくことも必要です。地下水の保全という問題は、時間をかけてじっくりと進めていくことが大切です。 少しずつ意識を変えていくことで、次に繋がっていくのではないでしょうか。ゴミの分別も時間はかかりましたが、今では広く浸透しています。 国や県、市町村という大きな単位での取組みももちろん重要ですが、学校や親子、地域といった身近で小さな単位で、節水や地下水の涵養に取り組んでいくことが効力感に繋がり、結果的には大きな広がりになるのではないでしょうか。■地下水へのルール作りと提言について 今回の調査の結果をもとに、どのような提言や地下水利用のルール作りが必要かを考えています。 次のステップとしては、水を使う産業従事者を対象にした調査を予定しています。地下水を大量に使うのであれば、森林の整備に協力してもらう、といった取り決めをしていくことも必要かもしれません。 河川や地下水というのは、市町村で区切られている訳ではありません。国有林や私有林から流れ、様々な場所を通りながら、地下に浸透しています。そのため、地方自治体や住民・企業・大学など全ての人たちが横の繋がりを意識しながら協力して進めていく事が重要です。大きな問題ですが、避けて通れない事ですので、本プロジェクトをきっかけに水の使い方を考えてもらえるような取り組みにしていきたいと考えています。10

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