2015工学部研究紹介|信州大学
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卒業後の未来像研究から広がる未来鈴⽊研究室数学によって物理現象を読み解く数理物理学の世界鈴木章斗准教授2014年より現職。専門は、数理物理。特に、量子力学や場の量子論にあらわれるハミルトニアンのスペクトル解析など。最近では、多様体やグラフ上の量子系についての研究をしている。学生によるゼミ風景、議論をしながら研究を深めていく写真サイズ高さ9.8cm×幅7.5cm配置位置横11.4cm、縦2.85cm⼯学基礎教育部⾨近年の科学技術の進歩により、これまで実現不可能と思われてきた理想的な量子系が現実に作られ、精密な観測も可能になってきました。このような量子系の具体例としては、人工原子やナノ材料など、さまざまな応用が期待されるものが含まれています。理想的な量子系といっても、その性質を厳密に解析することは容易ではなく、高度な数学が要求されることがしばしばあります。このように物理現象を厳密な数学を用いて解析しようという試みは、数理物理学と呼ばれる分野の研究テーマのひとつです。数理物理の中でも量子力学や場の量子論などに現れる物理模型を主な研究対象としていますが、研究に使う道具は「数学」です。(計算ソフトを使うこともありますが、その場合でも最後の詰めは数学です。)研究室の学生は、数学の専門書や論文について予習してきた内容を教員や他の学生の前でゼミ形式で発表します。ゼミを通して研究に必要な道具をそろえたら、各自設定したテーマに関する研究を行います。卒論のテーマとしては、結晶や曲面の変形に対し、その上を運動する粒子の振る舞いがどのように変化するかを数学的に解析する研究などがあります。卒業後の進路は企業へ就職の他、大学院に進学してさらに研究を深める学生もいます。岡本研究室工学基礎教育部門現象を記述する微分方程式非線形性の解析研究から広がる未来物理現象の多くは実は微分方程式で書き表わすことができます。現象そのものを一旦離れて、方程式という抽象的な枠組みで考えることにより、個々の状況に依らない統一的な視点から物事を理解することができます。ただ、株価の予測や一週間先の天気予報がほとんど当てにならないように、未来を予見することが困難な現象も現実にはよくあります。それは現象の複雑さのために方程式が非線形になることが原因です。本研究室では、そのような非線形微分方程式を数学的側面から研究して、非線形現象の解明に取り組んでいます。卒業後の未来像物理・生物・化学など多様な分野に微分方程式は表れます。さらに、株価変動もある種の微分方程式を用いて表すことができます。あまたの現象を理解するために不可欠な微分方程式は、世界中で活発に研究が行われています。方程式を解析して抽象的に得られた事柄から実際の現象を説明できることもあり、具体と抽象とを行き来することができるよう研究のさらなる発展が期待されます。数学の研究では、物事の本質を理解したり、理路整然と物事を説明する、といったどのような分野でも活きる能力が涵養されます。それらを活かして企業への就職や大学院に進学してさらなる研究への道に進む学生もいます。岡本葵助教京都大学大学院理学研究科博士後期課程を終了後、2014年より現職。研究分野は非線形偏微分方程式。ゼミの様子。自分が理解するのはもちろんのこと、それを分かりやすく解説する必要がある69

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