2015工学部研究紹介|信州大学
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沖縄の琉球石灰岩地帯の地下水観測用井戸の採水風景。周りの畑(サトウキビや電照菊)では灌漑用水として地下水が利用されている■宮城の地下水リスク評価のため、■地下水資源量を調査するため、井戸水を採水している河川の流量も測定する中屋研究室研究から広がる未来卒業後の未来像⼟⽊⼯学科中屋研究室では、湧水や井戸水などの地下水を採水し、中に含まれているトレ-サ-と呼ばれる化学物質を使って水の動きを追跡し、可視化する研究に取り組んでいます。例えば、クロロフルオロカ-ボン類や六フッ化硫黄などの人工的に製造されたガスは大気中にあふれ出し、年代とともに増加しています。これらのガスは、わずかに地下水中に溶けていて、その濃度を測定すると地下水の年齢が分かります。年代トレ-サ-になるのです。また、水中の18Oや2Hは、地下水の流動トレ-サ-になります。地下水の年齢や動きが分かると、地下環境の様子が見えてきます。地下水中の化学トレ-サ-を測定すると、その水が、いつ、どこ(水源地)で涵養し、地下をどのような経路で流動してきたかや、要した時間(滞留時間)がわかります。地域の水源地の保全や地下水資源の持続的な利用のル-ル作りに一役買っています。バングラデッシュなど、モンス-ンアジアの水問題、地下水汚染問題を解決し、安全で安心できる水資源を確保し、未来の人たちに受け継いでいく、そんな研究を進めています。卒業生は、官公庁、建設コンサルタント、JR、その他民間企業と様々ですが、何らかの形で水や野外調査に係わる仕事をしている人は多いそうです。土木関係の紛争の弁護士を目指して、卒論では野外調査研究をした弁護士の卵もいたそうです。中屋眞司教授民間企業を経て、1999年より信州大学工学部助教授、2010年より現職。研究分野は、水文学で、最近、地下水年代測定システムを開発し、モンスーンアジアの地下水資源の保全やヒ素等の大規模地下水汚染を調査。地下⽔の年齢を測り、⾒えない流れを可視化-化学トレーサーのパワーを利⽤-空洞構造体による東日本大震災の復興を提言閉鎖性水域(諏訪湖)における底泥のサンプリングと湖底地盤の強度調査および密度検層梅崎研究室研究から広がる未来卒業後の未来像⼟⽊⼯学科梅崎研究室では、豪雨による土砂災害および地すべりや地盤沈下などに対する防災・減災のために、土の強度や変形特性に関する基礎的な研究が実施されています。また、水質汚濁や悪臭が問題となっている閉鎖性水域の水質・底質浄化対策のために、室内実験や諏訪湖などにおける現地調査および実証実験も実施されています。さらに、放射性物質で汚染された地盤の除染技術の開発や環境修復に関する研究も行われています。これらは、多くの民間企業との共同研究として実施されており、また、省庁や民間団体が企画した研究プロジェクトなどにも参画しています。基礎的な土の力学的挙動の解明から地盤環境の調査や改質改善などの多岐にわたる研究が行われています。人々が生活している地域や都市部の防災・環境保全だけでなく、宇宙開発における月面基地の建設、惑星探査や海底都市の建設、海底探査などに繋がる研究が実施されています。研究室では、学生たちがこれらの実験・解析を日々行っています。市民生活をより快適で安全・安心にするための都市計画や防災対策などに携わる省庁や地方自治体、社会資本の整備などに携わる建設会社や環境調査会社、また、大学院進学を経て大学などの研究機関などへ多くの卒業生を輩出しています。梅崎健夫教授九州大学工学部助手、信州大学工学部助手、助教授を経て、2014年より現職。主な研究分野は、粘土の圧密・せん断特性、閉鎖性水域の水質・底質浄化対策、天然ゼオライト用いた除染システムの提案など。⼟の⼒学から地盤環境まで。災害を防ぐ、環境を守る30

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