地域と歩む|信州大学地域戦略センター
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信州大学と須坂市の連携で取り上げる第二のテーマは小水力発電。須坂市は現在、長野県が取り組む自然エネルギー資源を活用した新事業「1村1自然エネルギープロジェクト」の活用を進めている。出発点は平成18年2月に(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)で策定された「地域新エネルギービジョン」。ここで①公共施設への太陽光発電の導入、②クリーンエネルギー自動車の導入、③公共施設への木質バイオマス導入、④小水力発電モデル事業の導入―を重点プロジェクトとして打ちだした。これを受けて、信州大学工学部の池田敏彦特任教授、飯尾昭一郎准教授が、同市米子地区で小水力発電モデル事業を段階的に発展させ実施してきた。県内外から多くの視察客が訪れ、注目を浴びた取組みである。そして、今年、平成25年を一つ区切りにして、須坂市と信大の連携でこのプロジェクトを新たな段階に進めようとしているのだ。須坂市と信大が連携して本年度より開始するのは、既設の小水力発電装置(水車発電)4機の内の実証実験用3機を使用し、その発生電力を農業公園の電気設備や非常用電源装置、さらに新設される有害鳥獣用電気柵などに使用する計画だ。既設の実証実験用水車とは、平成22年から24年に、信大工学部飯尾准教授が環境省の委託事業として行った地球温暖化対策等技術開発事業(ナノ水力発電ユニットの高性能化等技術の開発)で設置した実証実験用水力発電装置のこと。環境省の委託事業は、農業用水など小規模の水資源を活用した小型水力発電技術の向上と、複数の小型発電ユニットを連系させて需要・供給のバランスを調整する「独立型スマートグリッド技術の開発」を目指したものであったため、需給バランスを制御する制御盤や、ヒートポンプなども設置されている。この委託事業の施設は、実証実験期間が終わった後は、市に移譲され改修して有効に活用することができ、信州大学も研究に継続使用できるメリットがある。米子地区には、上記の3つの水車のほかに、平成18年度より長野県のコモンズ支援金(当時)を活用して設置した環境融和型ナノ水力発電装置(米子水車)がある。これも池田特任教授らが牽引したもので、発生する電力を有害鳥獣対策用電気柵に使用している。今回のプロジェクトでは、この米子水車も含めて、より広範囲に電気柵を広げ、高齢化する山間地の農地を有害鳥獣から守ることも目指す。池田特任教授は「実効面だけでなく、エネルギー問題への市民の関心喚起のためにも重要だ。長く続く連携の一つの成果だと思う」と語った。農村公園に安定的電力提供有害鳥獣用電気柵を拡大信州大学 工学部 環境機能工学科准教授、工学博士。宮崎県出身。宮崎大学工学部卒、宮崎大学大学院工学研究科修了。2004年信州大学工学部助手、2007年助教、2011年准教授。専門は流体工学。飯尾 昭一郎 准教授(写真左)信州大学 工学部信州大学 工学部 環境機能工学科教授、工学博士。長野県信濃町出身。信州大学工学部卒、信州大学大学院工学研究科修了。1971年信州大学工学部助手、1987年助教授、1998年教授、2012年特任教授。専門は流体力学。囲碁、スキー、料理など趣味多彩。池田 敏彦 特任教授(写真中央)信州大学 工学部長野県「1村1自然エネルギープロジェクト」を活用した小水力発電モデル事業の新展開―有害鳥獣用電気柵や農村公園の照明に―612013.09.30 掲載

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