地域と歩む|信州大学地域戦略センター
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「妊婦さんに歯周病があると低体重児出産のリスクが上昇します」と栗田浩教授は話す。歯が健康な妊婦さんの低体重児出産発現率は4.1%である。それに対して、歯周病を患っている妊婦さんは79%と、約20倍も高くなる。しかし、「歯周病を治療することで、発現率を大きく下げることが出来ます」と栗田教授。治療した妊婦さんの低体重児出産発現率は、7.5%と治療前の10分の1以下まで下げることが出来るのだ。歯周病と低体重児出産の関係は、サイトカインが影響しているという。歯周病菌が増えると、免疫のバランスが崩れ、免疫を司る細胞から血中にサイトカ歯や口の中の病気が母胎や子どもに与える影響をご存知ですか?口の病気が母胎に与える影響口の中から健康づくりインが出される。このサイトカインが過剰に出ると、血中の炎症性物質が増加する。この炎症性物質が胎盤に流入することで、分娩時期の前に子宮の平滑筋収縮と子宮頸部拡張が引き起こされ、早産になると考えられている。「子どもの肥満率がここ20年で倍増しています」と栗田教授は注意を呼びかける。昭和62年には、男児女児ともに5%程度だった肥満率が、平成22年には約10%まで上昇した。「大きな原因の一つは、食生活の変化」だそうだ。人は、満腹中枢や胃、脂肪のホルモンが発する信号によって満腹を感じる。しかし、信号が発せられるにはある程度時間がかかってしまう。早食いしていると、満腹の信号が出るまで食べ続けてしまい、その結果必要以上に食べてしまうことになる。「現代の食事は、柔らかくて脂質が多く、咀嚼回数が少なくても飲み込めてしまうため、自然と早食いになるのです。時間をかけて咀嚼する食事を心がけ、よく噛むことを意識することが重要です」。体だけなく、食事は精神活動とも密接に関係しているという。夕食を家族と食べる子どもに対して、1人で夕食を食べる子どもの方が、体のだるさやイライラを感じることが多い。1人での食事は、精神の発達や安定になんらかの影響を与えていると考えられる。「ご飯は、家族で食べることを心がけ、子どもの咀嚼を促すメニュー作りをしていきましょう。そして、口の中から健康な体や精神を作りましょう」と栗田教授は語った。1987年新潟大学歯学部卒業。1997年信州大学(医学部附属病院)講師。2001年 信州大学(医学部)助教授。2011年より現職◆講演1 栗田 浩 教授 信州大学医学部歯科口腔外科学講座 「歯やくちの中の病気が母胎や子どもに与える影 響をご存知ですか?」◆講演2 稲葉 雄二 准教授 信州大学医学部小児医学講座  「気づこう!子どもからのサイン ~子どもの発達に ついて~」◆報告 野見山 哲生 教授 信州大学医学部衛生学公衆衛生学講座 (同医学部小児環境保健疫学研究センター長) 「エコチル信州 現在までの進捗と今後」◆ バルーンアート(風船遊戯団ゴンベエワールド)◆お薬路相談コーナー(上伊那薬剤師会)◆歯科相談と歯磨き指導コーナー(上伊那歯科医師会)◆塗り絵展示◆昔あそび(竹の家工房COO(空)佐野博志さん)信州大学医学部歯科口腔外科栗田 浩 教授エコチル調査エコチル調査とは、環境省が主導で行っている「子どもの健康と環境に関する全国調査」です。日本中で10万組の子どもたちとその両親に協力してもらう疫学調査であります。エコロジー(環境)とチルドレン(子ども)を組み合わせて「エコチル調査」と名付けられました。全国に15のユニットがあり、信州大学も山梨大学と共同でユニットの一つに選定されています。プログラム午前10時~11時30分~14時00分 ホワイエ(6階) エコチル信州2012秋の20129.29エコチルフェスティバル「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査※解説参照)」に関連し、秋に開催している「エコチル信州2012秋のエコチルフェスティバル」が平成24年9月29日、伊那市生涯学習センター「いなっせ」にて開催された。主催は信州大学医学部小児環境保健疫学研究センター。本イベントは、調査を成功裏に進めるために上伊那地域における妊娠、出産そして育児のサポートを目的にして平成23年度から開催されている。さらに、調査で分かってきたことを地域へ還元し、「エコチル調査」を広く知ってもらうことを目指している。今年は、上伊那地域を中心に200名を超える参加者が集まった。信州大学医学部小児環境保健疫学研究センター長の野見山哲生教授が「地域貢献が大学の使命。エコチル調査や他の研究で分かっていることを地域の方々に還元していきたいと思っています」と述べ、イベントが始まった。午前中の講演では、本学医学部歯科口腔外科学講座の栗田浩教授、小児医学講座の稲葉雄二准教授が講演を行った。最後には、野見山教授がエコチル信州の現在までの進捗を報告し、参加を呼びかけた。講演の後は、親子で楽しめるイベントや上伊那薬剤師会による「お(文・奥田 悠史)エコチル信州 シンボルキャラクター(エコぴよ)54信大NOW No.78plus+plus+地域と歩む。

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